■女子の虐待被害深刻「自分を大切にする仕方、わかんなかった」
虐待の問題でさらに深刻なのが女子だ。その割合は男子よりはるかに高く、70%近くにまで及ぶ。
窃盗で収容された17歳の少女。母子家庭で育った彼女は幼い頃、母親の交際相手からたびたび虐待を受けていたという。
少女(17)
「お母さんが18歳の時にソープで働いてて、(自分は)そこの客との子供らしくて、親戚とかに(自分は)いないような扱いをされてて。小学2年生ぐらいから(母親が)家に男を連れ込んでてその男の人から虐待をされて、それが小6まで続いて」
目の前で殴られても母親はただ見てるだけ。小学6年生の時児童相談所に保護され、その後しばらく祖母の家で過ごしていたが、虐待の影響から体調に異変をきたすようになったという。
少女(17)
「急に殴られてる瞬間を思い出す時があって、ご飯が食べられなくなったりとか、何も食べてないのに吐き続けることが増えて、病院に行ったらPTSD(心的外傷後ストレス障害)って診断されて人と話すのが怖くなって、失語症になっちゃって喋れなくなっちゃって・・・」
自分が大事にされてないことへの反動から不良グループに加わり、非行を繰り返すようになった少女。次第に違法薬物にも手を染めるようになった。そんな彼女は大人への強い不信感を抱いていた。少年鑑別所で弁護士に言われた言葉に対し・・・
少女(17)
「『環境が良ければ伸びてたのにね』って言われたんですけど『良い環境って何?』みたいな。そう言えばこっちが嬉しいと思うのかっていうか、もう誰も信じられなかったから。最近はもう社会に出るのが嫌だって思っちゃって、ここではできたら褒めてくれて、誰も暴言吐かなくて殴らないのに、何で社会に出た時の方が生きにくいとか、辛いと思っちゃうんだろうって」
そんな彼女に必要なのは、悩みをきちんと聞いてくれる信頼できる大人だ。担当教官は日々面接を重ねる。
教官
「どういう自分でありたいかっていうのはあるのかな?」
少女
「あります。強くなりたいし、自分を大切にしたい。でも自分を大切にする仕方もわかんなかったから」
教官
「結局自分が幸せになるために何が大事か。今まで積み上げてきたものは捨てていかんと」
濱本明日美 法務教官「基本的にやっぱり喋ってて傷のない子はいない。トラウマの部分も結構あったりして、ケアが難しいなって思うところもあるんですけど」
■親が身元引き受け拒否・・・家に帰れない少年たち

松原幸祐 統括保護観察官
「帰る場所がない少年を受け入れるところが少ないっていうのもあったり。沼田町さんの方でも農業というのが基幹産業なので、その担い手、若い人たちを受け入れるっていうところで思惑が一致して、施設を造ろうという話ができた」
入所は原則20歳まで。6人の保護観察官が常駐し、24時間生活を共にしながら少年たちの自立を支えている。現在、入所している少年は3人。それぞれが親元に帰れない事情を抱えていた。
入所している少年(18)
「家庭裁判所の裁判の時もお母さん来なくて、親は最初から引き受けは無理だって」
入所している少年(18)
「義理のお父さんも僕のこと気に入らなかったっていうか、親も来るなって言ってくるし自分も行きたくないと思ったんで」
少年たちの自立を支える上で欠かせないのが農業。センターでは町と連携し、週6日農業実習を実施。冬は主にシイタケ、夏はトマトの収穫、さらに肉牛の肥育など農業を通じて働く喜びを学んでいく。

実習には継続期間に応じ、1日1500円から3000円の手当てが支給される。これが退所後の大切な自立資金になる。
沼田町農業推進課 塩田崇 主幹
「農業自体が非常に根気のいる仕事で、長く携わらなければいけない仕事なんですけど、達成感とか充実感もしくは成功体験みたいなものに繋がって、ここを巣立って行く時に自信を持って出て行っていただける」
センターでは月に一度、食事会を開いたり町の運動会に参加したりするなど、少年が町民と交流を図る取り組みも行っている。
19歳になる1人の少年は絵を描くのが趣味で、いつも部屋でアニメのイラストを描いている。16歳の時、窃盗で少年院に入ったが、仮退院後、親が引き受けを拒否。少年院の勧めで縁もゆかりもない沼田町にやってきた。

「初めてやることなんで不安のほうが強かったんですけど、来てみたら接する人がいい人ばっかりで、話してても話を聞いてくれる人が多くて」
少年は幼い頃、母親の再婚相手からたびたび虐待を受けていた。未だに恐怖心が拭えないという。
少年(19)
「前にいきたい時もありますけど、でも怖いなと思う時もあるし、たまにお父さんっぽい人がなんか頭を掻く仕草とかする時に腕が上がったりすると、体が引いたりはしますけど。ガンって言われるのが結構弱いみたいで」
それでも今は、保護観察官や地域の人々に支えられながら、着実に自立への歩みを進めている。
少年(19)
「ここの行事で人と関わったり、農業で人と関わっていくうちに、だんだん社会に必要なスキルっていうのは若干身についたかなと思っていて。僕は北海道で自立しようと思ってるんですけど、初めての地で一人で暮らして、仕事をしながらちゃんと一人として生きていくっていうのはありますね」