スペイン北西部の町、オビエドの劇場で、奇抜な衣装に身を包んだ日本人マジシャンが拍手を浴びていた。アメリカの養成学校でマジックを、東京大学大学院で手品の歴史を学んだ後は、学芸員になった。異色の経歴を持つ世界的マジシャンはいまなお、マジックの可能性を追い求めている。

「マジックのオリンピックコメディ部門」で日本人歴代最高の4位に 

つば広の赤いハットにドレス姿。「マダム」と呼ばれるキャラクターを演じているのは、高知在住のマジシャン、Tokyo Tomo(トーキョー トモ)さん、本名 金盛友哉さん(33)。大きな箱の中に閉じ込められたマダム、そこに傘が次々と突き刺さる。やがてその箱はモンスターとなって暴れる。海外で高く評価されているマジック、「ダンボールモンスター」だ。

海外で高く評価されている「ダンボールモンスター」

金盛さんは高知を拠点に、ヨーロッパなど海外の劇場でマジックショーに出演し、世界を飛び回っている。2022年には、マジックのオリンピックといわれ、3年に一度開催されているFISM世界選手権大会コメディ部門で、日本人歴代最高の4位に輝き、一躍注目されるようになった。

■金盛友哉さん
「難関といわれるコメディ部門で評価されたことは、とてもうれしいです。自分のマジックが世界に通用するんだというお墨付きをいただき、益々意欲が湧いてきました」

2023年末からのスペインツアーは、金盛さんがかねてからあこがれていた世界的マジシャン、ファン・マヨラールさんからの招待で実現した。数年前、金盛さんは、台湾で実際に彼のマジックを見た。炎が床の上を動き回ったあと体に移り、最後は指先から花火となって飛び出す、まるで魔法のような光景だったという。

その偉大なマジシャンからの誘いで、新たな年の幕開けをスペインで迎えた。結局、2023年は、ドイツで3か月、その後台湾、スペインと、1年の半分近くを海外で過ごした。

スペイン・サンセバスチャンの劇場で

■金盛友哉さん
「スペインツアーは、最も尊敬するマジシャンから声をかけて頂きとても光栄でした。海外公演は、世界でも一流のマジシャンと一流の劇場でマジックを披露することができますし、その国々でマジックがどう受け止められているかを感じることができるので、大きな学びがありますね」