妹と同じ誕生日に生まれた子ども 遺族となった自身の“役割”
▼渡邊勇さん「事件当時、妻が妊娠中だったという話をしましたが、子供が生まれた日が、亡くなった妹(美希子さん)の誕生日と同じ日なんです。干支も同じなんですね。すごい確率やなと。」
「別に生まれ変わりとか、そんな世界はあまり感じてはないんですが、ある意味、メッセージかなというのもちょっと感じていまして。子供からのね、『お父さんちゃんとせえよ、あんたにはちゃんと役割があるんだよ』ということを、ある意味メッセージ的に言ってくれているのかなと思います。」
「今はまだ、幼稚園とかの年なので、いろんなことが分かっていない年齢ですけど、年齢を重ねたときに、こういう事件があって、こういうことがあったというのは、そのうち認識していく可能性があるかなと思っています。」
「そのときに、自分や家族はどういうスタンスでいられるのか、そういうことのも含めて、講演をしている部分もあるなと思っている。」
「本当に、大切な人に『ありがとう』とか、『大切だよ』ということを分かっていただけるような世の中になってほしいと心から望んでいますし、こういう事件が少しでも起こらないような心遣い、配慮みたいなものがどんどん広がっていくことを、望んでいます。」
(取材後記)
――これまでにも、犯罪被害者遺族の方の話を本で読んだり、オンラインで聞いたりしたことはありました。でも、身近な人を事件によって失うというのは、やはりどこか遠い世界の話のようで、自分が生きる現実の世界でそんなことが起こるという実感はあまり湧いていませんでした。
初めて目の前で、直接遺族の話を聞いたことで、この壮絶な話は、今、私の前に存在している2人が経験されたことなのだと、こうしたことが誰にでも起こりうることなのだと、現実味を帯びた実感が心に残りました。そして、「配慮や心遣いが広がり、悲惨な事件が起こる可能性が少しでも低い社会になれば」という2人の言葉に、人の行動というものには、他の人との繋がりが大きく関わってくるのだと気づかされました。
記者としての仕事を通じて、そのことを広く伝えていけるかもしれない。はじめから大それたことは難しくても、1人の人間として、周りの人たちに対して声掛けをするところからなら始められる。
それで不幸な事態が防げるのかも、防げたかどうか知る術があるのかどうかも分かりません。でも、この社会で生きる1人1人が、今よりも少しだけ、周囲の人への思いを言葉や行動で示して、周りの人に、『誰かとの繋がり』を感じてもらえる社会になってほしいし、していきたいと考えています。【テレビ高知・尾上七海】