「県内医療は破たんしている」「災害レベルだ」2022年8月、会見を開き、重い口調で語った高知県の医療関係者たち。その背景には、オミクロン株による、かつてない感染の波がありました。2022年の新型コロナを振り返ります。
コロナ禍3年目。ウイルスとの向き合い方は少しずつ変わっていました。
▼高知県 濵田省司知事(5月)
「1日の感染者に一喜一憂はしない。ある程度は覚悟して医療提供体制のひっ迫を防ぎ、行動制限するわけではなく社会経済活動をまわし両立していく」

国や高知県は、“感染確認数”よりも“医療への負荷”を重視し、感染が広がっていても行動制限や時短要請は出さない方針としました。一方で、力を入れ始めたのは、検査体制の拡充です。県内には、多くの検査センターが開設されたほか、薬局での検査も可能となりました。多くの人にとって、新型コロナの検査が身近なものになった年だったといえるかもしれません。
▼薬剤師
「多くの“隠れた感染者”を見つけることができるし、その証明によって経済活動も広がるのではないかと思う」
積極的なワクチン接種と検査による社会経済活動の再開。各地で人の流れが戻っていきます。しかし、感染力の強いオミクロン株が、県内にも広がっていきました。

▼高知県健康政策部 川内敦文医監
「一日あたりの感染確認が1000人を超えたということでますます異次元の領域になっている」
第7波。8月だけで、およそ4万人の感染を確認。これは、当時の累計患者数のほぼ半数にあたります。これに伴い、医療現場はかつてないほど深刻な事態になっていました。

▼近森病院 感染症内科 石田正之部長(8月)
「高知県内のコロナ診療は破たんしている」
高知市の近森病院は会見を開き、医療現場の窮状を訴えました。病床が満床にもかかわらず、増加していく搬送件数。スタッフの感染や濃厚接触による人員不足。救急患者を受け入れられないほど医療体制はひっ迫していました。


感染症内科の石田部長は、当時の状況をこう振り返ります。
▼近森病院 感染症内科 石田正之部長(8月)
「会見を開いている状態で、ほぼほぼ崩壊しかけていた。これから崩壊するのではなく、崩壊が始まっていた。提供されるべき医療が提供されない、もしくは、提供までに時間がかかるのはおかしいですよね」

その後、9月中ごろには、第7波も収まりを見せ始めていました。お盆を過ぎ、人の交流がひと段落ちついたためとみられます。そして、いま。人の交流が増える年末年始をむかえ、再び感染者は増加。第8波に入りました。

県は対応の目安を6段階のうち上から2番目の「対策強化」に引き上げました。ただ、会食やイベントなどへの制限は行いません。第8波も、ワクチン接種と検査で乗り越えていく方針です。
▼高知県 濵田知事
「社会経済活動を一律にやめてしまうということではなく、ワクチンの接種をすすめる、あらかじめの無料の検査などで陰性を確認する。そういったプロセスを経て社会経済活動そのものをはできるだけ実施していく。感染拡大防止との両立を図っていく。」
終わりが見えていないコロナ禍。私たちは、少しずつ、前に進めているのでしょうか。