「認知症の高齢者にいつまでも幸せに暮らしてほしい」。高知市の高校生でつくる団体が、ある小物を作り、活動しています。活動の様子を取材しました。

2025年6月、高知国際高校で立ちあがった生徒たちの団体、「KnItter’s(ニッターズ)」。「認知症マフ」という物を編んでいます。

認知症マフとは毛糸でできた筒状の小物。

柔らかく、温かい毛糸の生地が手を包み込むことで、認知症患者の不安を和らげるケア用品としてイギリスで開発されました。

近年、国内でも介護施設や医療現場で導入が進んでいます。

▼KnItter’s代表 山﨑友結さん
「治療を受けている患者さんとか多いので、これで安心して落ち着いて治療が受けられたらなと思います」

こう話すのは団体を立ち上げた2年生の山﨑友結さん。編み物の経験はありませんでした。母が働く近森病院が認知症マフの導入を進める中、手伝いを頼まれたのがきっかけでした。

祖母に教えてもらいながら、個人的に作ったマフを寄付してきましたが、もっと多くの病院に寄付したいと、団体を立ち上げました。学校でメンバーを募集し、今では25人が参加しています。

▼KnItter’s代表 山﨑友結さん
「こんなに大規模になると思っていなくて、みんな入ってくれてよかった。積極的にやってくれる子が多い」

メンバーのほとんどが編み物の経験がなくしかも部活との掛け持ちです

「バスケ部です。書道部です。吹奏楽部です。茶道部です」

▼吹奏楽部と掛け持ち 岡本一花さん
「大変なんですけど、空いている時間土日の午後からとかにいっぺんにやっている。自分たちが作ったマフで患者さんがすごく安心してくれるのを知った時にすごく作ってよかったなって思います」

▼茶道部と掛け持ち 椎原咲那さん
「(団体に入った理由は)おばあちゃんが認知症なので、マフを作って自分も渡したいなと思って、まだ渡せてないですけど、自分のことを忘れて欲しくないのでマフと一緒に記憶に残ればいいなって思います」

家族に教えてもらったり、動画を参考にしたりしながら、それぞれの空き時間に作っています。

「これにする?こっちでもいいか。こっちのほうが明るいきテンションあがるかも」

使う人に少しでも明るい気持ちになってもらおうと生地の色もじっくり考えます。

一つ一つに心が込められている認知症マフ。団体を立ち上げた山﨑さんは、これまでに寄付したマフが実際に使われる様子を見学したことがあります。

▼KnItter’s代表 山﨑友結さん
「(マフを)握ったまま眠っている人もいて、ニーズがあったんだなと。もっとバリエーションを増やそうかなと思いました」

見学では、難しい治療を受けている患者がいることも知りました。どうすれば、もっと喜んでもらえるのか。その思いは一層強くなりました。

この日、山崎さんが作ったマフがこちら。

▼KnItter’s代表 山﨑友結さん
「(生地の色)が水色ってことで池・湖っぽくてスイレンとかあったらきれいかなと思って、花を真ん中に添えて(アヒルが)泳いでいるよみた いなデザインにしました」

山崎さんの作るマフには優しい物語がありました。

12月18日、山崎さんたちがマフをもって訪れたのは高知市の図南病院。

▼KnItter’s代表 山﨑友結さん
「メンバーみんなで団体を立ち上げて1つ1つ作ることができたので使っていただけたらなと思います」

図南病院ではマフの導入は初めてです。職員たちも、マフを触って感触を確かめます。

「あたたかいなと思います。これ1つ作るのにどれくらいかかります?」

▼KnItter’s代表 山﨑友結さん
「みんな部活と勉強の両立とかがあって、そんなすぐにはできないけど1週間あれば1個できます」

実は、寄付を依頼したのは病院の看護師、岡本容子(おかもと・ようこ)さん。娘の一花さんが、KnItter’sのメンバーです。岡本さんは、認知症患者が入院する病棟で働いています。

 

▼図南病院 看護師 岡本容子さん
「(患者の)身体抑制が外せないかという検討を毎日繰り返し行っています。手づくりのものに患者さんが触れる機会もすごく少なくなりますので、長期療養の方にはよろこばれると思いますし、身体抑制が外せることにいかせていければと一番に思っています」

認知症の高齢者が入院する病院では、患者が点滴を外したり、自傷行為をしたりすることがあり、専用の器具で体や手を固定することがあります。

「身体抑制」というこの措置は、安全のためには大事なことですが、精神的なストレスや認知症の加速につながるなど様々な弊害をもたらすとも言われます。図南病院でのマフの導入は「身体抑制の緩和」を目指すもので、手を覆うミトン型手袋の代わりに使用する予定です。

▼図南病院 脳神経内科 沖良祐 医師
「体の制御がきかなくなる時に安心できるものが手元にあると、治療がやりやすくなる」

▼図南病院 髙野篤 院長
「中に握るものがあって、これを握っていると安心感がありますね。(活動を)もっと広げていただいたらいいと思います」

高知県のまとめによると県内では2035年まで認知症の高齢者が増え続けると予想されています。

「高齢者がいつまでも幸せに暮らせるように」

高校生たちは優しさも一緒に編み込んで、この取り組みを続けていきます。

▼KnItter’s代表 山﨑友結さん
「年下の子でも興味を持ってくれる子が最近増えていて、そういった子たちにしっかり引き継いでもらいたいと思っているのと。これから認知症の方が増えるかもしれないので、そういった方が安心して将来高知に住んでも大丈夫なようにしっかりみんなでつくっていきたいと思っています。これからも」