(鈴木さん)
「ご飯を食べないとか、食べることで表現するしかない状況になっていると、思ってあげてください」

オンラインで開かれた研修会で、小中学校の教諭らに向けてこう訴えました。

(鈴木さん)
「今、私は後遺症に悩まされています。今はお仕事も出来たり普通にご飯が食べられたりしています。でも、普通と呼ばれる食事に戻っても、長年20キロ台、30キロ台をウロウロしていた代償は大きいです」

鈴木さんは、回復した今も同世代に比べて骨や歯は脆く、胃腸の機能低下などの症状に悩まされています。

(鈴木さん)
「子どもたちの早期発見、早期治療、早期回復が大切だと思っています。子ども本人から周りに助けを求めることが難しいです。大人の助けが必要です。本人が感じている苦痛を、食べること・食べないことで表現しなくても良くなること、これが出来れば本人も楽になります。人生を進んでいきたくなります。これを回復と呼びます」

10代、20代の記憶が、摂食障害で埋め尽くされてしまわないように-。
鈴木さんは、一人でも多くの子どもたちのSOSに、身近な誰かが気付ける社会になってほしいと願っています。

(鈴木さん)
「中学生の摂食障害の子に、何が嬉しい?って聞くと、通院の道中にお母さんと話ができたことが嬉しかったと、生き生きと喋ってくれます。医療者と親御さんと学校の先生が、自分のことを大切に思って話してくれているのが嬉しかったと言う子もいます。あなたのことを大事に思ってるよっていうメッセージは一番大事で、摂食障害の一番の根本治療薬だと思っています」

「手のかからない子ほど、しんどいと言えない。しんどいと分からない状態なのかなと思う。そういう時は、孤独や不安でいっぱいだったりするので、声をかけてあげてほしい。話の内容は何でも構いません。あなたのことを大事に思ってるよっていう気持ちで声をかけてあげてください」

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取材を続けることは、10歳の私と向き合うこと

摂食障害を克服してから約20年、過去の記憶に蓋をして過ごしてきた私にとって、この取材を続けることは、10歳の自分と向き合うことでもありました。

真面目で完璧主義、自分の弱さをさらけ出すのが苦手だった当時の自分にかけてあげたい言葉が、たくさんあります。「お願いだから、食べて」と困り果て、自身を責めるしかなかった母にも、きっと支える誰かが必要だったはずです。

命を落とすこともある深刻な病であるにもかかわらず、明確な治療法は確立されていない摂食障害を、家族や医療の力だけ克服するのは、本当に難しいことです。

医療、行政、教育、福祉、企業、地域社会全体に摂食障害の理解とケアがくまなく広がるように…。小さなリボンに託された願いが、全国に浸透することを心から願っています。