■「人と話すのが怖い…」利用するカフェには”こだわり”が

私が発声障がいの取材を進める中で出会ったのが、松山市の市川 涼子さんでした。

取材に向けた打ち合わせで、市川さんから指定されたのは松山市内のとあるカフェ。

市川さんがこの店を訪れるのには、ある理由がありました。

この店、注文はタブレットで、配膳はロボットが行っていたのです。

店員さんと話さなくていいところが気に入っています」
市川さんは店を選んだ理由をそう話しました。

私が受けた市川さんの最初の印象は、人との会話を避けているということ。声を出すことに恐怖を感じているようにも見えました。

■母音、イ段、挨拶、数字…「言いたくても言えない」

松山市内のドラッグストアで働く市川さん。

自らの症状について「言葉の始めが出づらい。詰まりと途切れ、震えがある」と打ち明けてくれました。

レジでの接客では、お客さんから「声、大丈夫ですか」と心配されることもしばしば。「すみません」と謝ることしかできないといいます。

市川さんは10年前、声帯に異常が見られないのに、喉の筋肉が痙攣して声が震えてかすれたり出づらくなったりする「痙攣性発声障がい」と診断されました。

市川さんは母音とイ段から始まる言葉に加え、挨拶や数字など決まった言葉が出しづらいといいます。

症状が現れるときとそうでないときがあり、大きな声も出しづらいといいます。

「レジの時だけ出ないとかだったので理解は全然されなかったし『声出てるやん』って言われるのもよくありました」

悲しみや悔しさ、もどかしさを感じる日々で、市川さんは周りの人とのコミュニケーションがとりづらいという辛さを抱えています。