■症状は人それぞれ声が出ないときには筆談も

この日私は、松山市内で開かれた発声障がいの患者交流会を取材しました。

症状の程度や特徴は人それぞれで、声が出ないときには筆談も行いながら日常の出来事や悩みを共有します。

■参加者のやりとり
「なんかある日突然、急にみなさんと同じように声が出しづらいってなって」

「この声で伝わる?」

「言いにくい言葉は『あ行』?それとも単語?」

「『はい』という返事が苦手。『はい』は未だに言えないときもある」

「口の動きで分からせようとするのが(マスクで)今できない」

「コロナ禍で発声障がいの人ほとんどが苦しんでいるんじゃないかな」

どうしても発声できない言葉があるため、会話の中で「本当に伝えたい言葉」ではなく「言いやすい言葉」を選ばざるを得ない人も少なくありません。

痙攣性発声障がいの患者は全国に7,000人前後いると推計されていて、20代~30代の女性が多いということです。(※高知大学などの調査)

しかし、診断が下されていないなど潜在的な患者を含めるとより多くの人が自分の声に悩んでいると考えられています。

症状を和らげる効果が期待されているのが、声帯の筋肉の緊張をほぐす「ボトックス注射」です。

発声障がいのボトックス注射には4年前に保険が適用されましたが、それでも自己負担額は1回につき1万円から2万円程度。3か月に一度注射を打つ患者が多く、経済的な負担が強いられます。

SDCP発声障害患者会の田中美穂代表は「発声障がいってどんな不便なのかというのが本当に分かってもらえない」と病気の辛さを明かしてくれました。

■発症の原因は「声の酷使」と「精神的な要因」か

市川さんや私が発症した発声障がいについてより深く知るため、「音声」を専門とする田口亜紀医師を訪ねました。

田口医師によると、発声障がいの原因は様々ですが、1つは声を出しすぎる、酷使しすぎること。もう1つは精神的な要素が絡んで声が出しにくくなると考えられるといいます。

喉にポリープができるなどの場合を除き、そのほとんどは声帯に異常が見られないため、根本的な治療方法はないと言われています。

「一生治らないというケースもあるんですか?」

私は率直に問いました。