(記者)
「決して逃げなくてよいのだということを意図して言ったのではないと思うのですが、言葉足らずだったと思うところもありますか?」
(北浦さん)
「そうですね。言葉足らずなのは当然。それをうまく説明する力量が自分にはなかったということ。聞きにこられた方がどう思ったかは存じていないので、万が一そう思われたのならそうならないようにお伝えの仕方を心がけたいと」
町が2013年に行った震災の検証では、職員の避難が遅れた要因のひとつに「防潮堤の整備による油断があった」としています。
北浦さんの語りの意図はこのことを伝えたいというものでした。
それでは話を聞いた人にはどのように伝わったのでしょうか。
(話を聞いた人)
「今この場に立ってお話を聞いた時に、確かに安心しちゃうかもな、3mの津波が来る。6mの防潮堤がある、となると大丈夫だろうという安心感が出てしまって、避難につながらなかったんだろうなっていう実感はけっこうお話を聞いていて思うところがありました」
語りの意図がしっかりと伝わった人がいる一方で、語りによる伝承は表現の仕方やニュアンスで伝わり方が変わるという難しさが改めて浮き彫りになりました。
大槌町は今回の指摘を受けて、語りの中身を確かめるといった準備が十分でなかったとして、今後は聞き手に誤解を与えないよう語り部の育成体制の構築を進めていくとしています。
しかし、震災が起きた2011年から大槌町で語り部の活動を続ける団体の代表、神谷未生さんは、「行政が話す内容をチェックすることには違和感を感じる」とした上で、行政に期待する役割を次のように話しました。