おかゆメーカの社長を務める中山大(たかし)さん―。
実は、元「新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ」のプロ野球選手です。
元野球選手が、なぜ “おかゆ”を作っているのでしょうか?
新潟県五泉市にある、おかゆ専門メーカー『ヒカリ食品』にお邪魔しました。

元投手が「M&A」で事業を継承
創業35年の『ヒカリ食品』はおかゆ一筋で、岩船産を中心とした新潟県産コシヒカリを100%使用し、水や炊き方にこだわって作りあげた優しい味わいが自慢です。
【ヒカリ食品 社長 中山大さん】
「先代から引き継いでいる釜の炊き方ですね。企業秘密で具体的な内容まで具体的に言えないんですけど…簡単に言うと長く炊いています」
社長の中山大さん(42歳)は3年前に、後継者がいなかった『ヒカリ食品』を高齢の創業者から「M&A」で事業を引き継ぎました。
M&Aとは、企業や事業の買収・合併のことです。
新聞やフリーペーパーを扱う新潟市東区の企業『エヌエスアイ』に勤務している中山さん。もともと『ヒカリ食品』には『エヌエスアイ』が新規事業としてM&Aに乗り出していたのですが、最終的には会社ではなく中山さんが個人で事業を継承することにしました。
【ヒカリ食品 社長 中山大さん】
「新型コロナウイルスのタイミングもあって、エヌエスアイでは『いい会社だけど今すぐ決断できないね』という話になってたので『じゃあ、個人的に私が買ってもいいですか』と。先代の思いだったり、スタッフの思いだったり、色々なものを全部見させてもらって『すごくいい会社だな』と感じていたので、こういうものをなくしちゃいけないなと」
地域の中小企業は、地元の“経済や雇用”を支えていますが、事業が黒字でも後継者が見つからずに廃業せざるを得ないケースも近年ではみられます。
こうした問題の解決手段の一つとして注目されているのが「M&A」です。

新潟県内の企業およそ4200社を対象に、帝国データバンクが“代表就任の経緯”を2022年に調査したところ、最も多い親族間での“承継”が前の年よりも低下していました。逆に増えてきたのが『内部昇格』と『M&Aなど』による代表への就任です。
『M&Aなど』の割合は、2011年の調査開始以降初めて2割を超えています。
また調査対象になったおよそ4200社のうち、後継者問題を抱える企業は53.5%ということですが、その割合は5年連続で低下しています。

【ヒカリ食品 社長 中山大さん】
「もし誰もやらないと会社がなくなってしまうということ自体がもったいない。自分ができるかできないかではなく『やるかやらないか』としか思っていなかった」
従業員からは「明るい人で、みんなやる気になった」「愚痴とかも言いやすい」と言われている中山さん。“おかゆづくり”の技術と雇用を引き継いだあとに、すぐに取り組んだことがありました。