「もう今シーズンで終わりかな」何度も通った聖籠への道で
ひざのけがを乗り越えながら、川村選手はそのたびにピッチへ戻ってきた。
しかし、今シーズンは違った。
練習を抜ける日が増えた。コンディションを上げようとしても、ひざが腫れる。
思うように走れない時間が、少しずつ重なっていった。
「やっぱり、もう今シーズンで終わりかなっていうふうには…ふと思った感じですね」

その思いが浮かんだのは、特別な場所ではなかった。
何度も通った、聖籠への道。
練習へ向かう車の中か、帰り道か。川村選手自身も、はっきりとは覚えていないという。
ただ、家から練習場までの時間は、いつも自分と向き合う時間でもあった。
「家から来る時もですけど、20分とか時間あるので。結構いろんなことを考える時間に自分はできていて。その時に、『やっぱり、もう今シーズンで終わりかな』って…ふと思った感じですね」
引退を決めた瞬間は、劇的なものではなかった。
何度も通った道の途中で、いつもの時間の中で、静かに浮かんだ思いだった。

ただ、その決断の奥にあったのは、ひざの状態だけではない。
川村選手の目には、成長していく若い選手たちの姿があった。
「若い子たちが試合に出て、活躍してる姿だったりとか、成長してる姿を見てきて。『このチームを任せて大丈夫だな』っていうのも思ったので」
自分が抜けることへの不安だけではなく、任せられると思えたこと。
それも、川村選手が現役生活に区切りをつける理由のひとつになった。










