走りたいのに、走れない 3度のひざのけがと向き合った時間
しかし、その走りを何度も止めようとしたものがあった。
3度にわたる、ひざのけがだった。
走ることを大切にしてきた川村選手にとって、思うように走れない時間は、簡単に受け入れられるものではなかった。
「毎日、感情は乱れまくってましたね」
川村選手は、当時の心境をそう振り返る。

「もうやめようかな。あ、でも、きょう調子良かったから、まだいけんのかな。あ、でも調子悪くなったから、もう無理なんかなって」
走りたいのに、走れない。
戻りたいのに、思うように戻れない。
気持ちは、日によって揺れた。
それでも川村選手は、ピッチに戻る道を選んだ。
「もう一度、ピッチに戻るっていうコメントも残してたので。絶対、戻ってやろうっていう気持ちはありましたね」
支えてくれた人たちを裏切ることはできない。
もう一度ピッチに戻ると、自分の言葉で残したからこそ、その約束を自分で手放したくなかった。

一方で、けがをする前の自分と比べてしまう苦しさもあった。
手術後、トレーナーからは「前の自分には戻れないかもしれない」と伝えられた。
その言葉を受け止めながら、川村選手は自分にできる走り方を探していった。
「前の自分と比較しちゃう自分もいたので。他の部分を補わなきゃいけないっていうふうに考えることもできました」
前の自分に戻るのではなく、今の自分でどうチームの力になるか。
走る距離や強度だけではない。
声で人を動かすこと。スペースを使わせること。自分にできる形で、チームを助けること。

ひざのけがは、川村選手の走り方を変えた。
それでも、その時間は、川村選手に“別の走り方”を教えていった。










