国内のスタートアップが開発した、日本初のAIを搭載したインフルエンザの検査機器が注目されている。
AIがもたらす医療の未来 熟練医師の「視診」を再現
さいたま市内にある内科クリニック。
発熱を訴え、特にインフルエンザが疑われる患者の検査に使われていたのが、AIを搭載した医療機器。

AI搭載インフルエンザ診断支援機器は、50万枚以上ののど画像を基に開発。

その場で撮影した画像や問診の情報などから、インフルエンザ特有の症状がないか判定するもの。医師が診察を始めてから3分ほどでインフルエンザの診断がつくため、患者が急増するこの時期、威力を発揮する。

実際に受診した人たちは「鼻の検査だと(子どもを)押さえつけないといけない。だからとても画期的だと思う」「楽でしたね。つらくなかった」「早いし、良かったです」と話す。

この機器は2022年、日本で初めてAIを搭載した医療機器の承認区分の一つである
「新医療機器」として、国の承認を取得。検査は保険適用の対象となり、既に47都道府県の医療機関で導入されている。

ハレノテラスすこやか内科クリニック 渡邉健 院長:
苦痛が伴わない検査ができないかと思い導入した。結果が出るまでも早い。(流行期は)待つ時間がネックになるので、そういう意味で有効だと思います。
この医療機器を開発したのは、2017年創業のスタートアップ企業「アイリス」。

2023年、50以上の国と地域の企業が参加し、ビジネスプランを競う「スタートアップワールドカップ」で優勝。前例のなかった喉の画像をAI解析する手法と、日本国内で既に医療機器として承認されていることが高く評価された。

アイリスを率いるのは、現役の救急科専門医でもある沖山翔代表。社内にはAI開発のエンジニア、ハードウェア開発の専門家らが在籍し、開発のスピードを後押ししている。
アイリス プロダクト担当 亀山紗穂 執行役員:
AIやハード、ソフトウェア開発だけじゃない。社内にタレントが揃っているのが、会話も早いし、それぞれの領域を埋めながら一緒に作れるのがいいと思う。
AI搭載の医療機器を開発したきっかけは、かつて離島で勤務した経験から。
アイリス 沖山翔 代表取締役:
(医療過疎地域では)自分が診断できない病気は、全て見逃される病気になる。インフルエンザだけを診断するために開発しているわけではないので、ほかの病気にも広げていく責任がある。

アイリスと共同研究を行う順天堂大学。「咽頭画像研究会」では、様々な病気の患者の喉を撮影し、データベース化することで、喉の診察でインフルエンザ以外の病気の早期発見を目指している。喉の写真を簡単に撮影し、AI技術で解析できるようになったことで、医療の可能性が広がったという。
総合診療科学講座 森博威 准教授
「ライトを照らして(舌を)押さえながら写真を撮るのが、舌圧子を押さえると手が3本ないので、うまく撮れないんですよね」
同じく宮上泰樹助教も「コロナだったりHIVの急性感染だったり、その他のウイルスや細菌感染の初期症状が喉で分かるようになるかもしれないのがこれからの発展性」と語る。