物価高のカギを握るのは『金融緩和』

 ―――物の値段が上がりエネルギーの値段も今後どんどん上がっていくかもしれない。そんな物価高ですが、池上さんによると、カギを握るのは日本銀行ということですね?

 「物価高のカギを握るのは日本銀行が行っている『金融緩和』ですね。金利を低いままにしてお金を借りやすくして景気を良くしようとする政策。金利が低いということは、例えば、いろんな企業が新しい仕事をしようとする、人を雇ったり工場をつくったりする時に、銀行から低い金利でお金が借りられるわけですよね。だから景気を良くしようとするにはそうだし、あるいは、例えばマイホームを買いたいという時に、今、住宅ローンの金利ってすごく低いんですよね。だから今なら借りやすい、といってみんなにマイホーム買ってもらおうじゃないかと、そうすると景気が良くなるだろうという、あえて金利を低い状態にしている。これを金融緩和といいます。言ってみれば、財布の紐をゆるゆるに広げているという状態なんですよね」

 ―――政策金利をみると、日本は-0.10%、アメリカは1.50%~1.75%なんですね?
 「はい。政策金利(中央銀行が一般の銀行に貸し付けるときの金利のこと)は、要するにそれぞれの銀行がどれだけの金利にするかっていうことを決めている目標の数字なんですけど、日本は-0.10%。とにかく日本銀行としてマイナスにするよっていうと、日本全体の金利がうんと低くなるだろう、ほとんどゼロに近づくだろうっていうやり方をとっているんですね。だから実際に例えば今、銀行にお金を預けておくと、金利って0.001%しかもらえないんですね。それに対してアメリカは今どんどん景気が良くなっているので、どんどん金利を引き上げていて、現在1.50~1.75%なんですけど、まもなくさらにこれを0.75~1%ぐらい引き上げるだろうという。金利の差が非常に大きくなるということなんですね。つまり何が起きるかというと『ドルで持っていた方がお金が増やせるよね』と考える。そうなると円をドルに換えようとなる。円をドルに換えるということは、円なんかいらない、ドルがほしいってことでしょ。人気のないものって値段が下がりますよね。結局、円安ドル高になっていくということなんですよね。お金を増やそうという投資家は思惑がある。つまり『ドルを持ってた方がいいや』って思う人が増えれば円をドルに換えるって動きが出るだろう、ということは円安ドル高になるな、じゃあ『その前に円をドルに換えておこう』って考える人たちが出てくるんですよ。実際のこのいわゆる金利の差が出ると、みんながそっちにするだろう、じゃあその前にやっておこうといって、今いわゆる投資家と呼ばれる人たちが円をドルに換えるってことをどんどんやっているんです。だから円安が進んでいるということなんですよ」