「広島ガス」と「大阪ガス」が検討中の『スポット購入』とは?

 ―――考えられる影響についてみていきます。広島ガスと大阪ガスにおいては、全調達量におけるサハリン2の割合が、広島ガスは約50%、大阪ガスは約4%です。このパーセンテージはどう見たらいいのでしょうか?

 「これはね、どちらもサハリン2から長期契約で天然ガスを仕入れるという点では、この契約を結んだ段階では非常に良い視点だったと思うんですね。長期契約をすると天然ガスの価格変動に影響されないんですよね。でも、ひょっとすると、ロシア側はこの調達の割合を分かっていた可能性もありますよね。広島って岸田総理の地元でしょ。岸田総理の地元に大打撃を与えるという、岸田総理を一番困らせるやり方ですよね」

 ―――長期契約の期間が、広島ガスで2027年度までの20年間、大阪ガスが2031年度までの24年間。ただ、ロシアの出方によってはこれがいつ終わってしまうのかわからないような状況なわけですね。検討中の対策ですが、広島ガスは「1、ほかの長期契約相手からの供給を増やす」「2、緊急時の相互融通協定を結んでいる会社の協力を要請する」「3、スポット購入」と、1・2・3と段階的に対策を踏んでいくというのが広島ガスのやり方です。一方、大阪ガスは「スポット購入」または「ほかの大型プロジェクトからの調達」ということで、サハリン2以外にもいろいろなプロジェクトが世界にはあるということです。この「スポット購入」とは何ですか?
 「普通は長期契約なんですよね。でもそれ以外で足りなくなった場合は、今の価格でどこかから買う、これが『スポット価格』というんですね。スポット購入というのは天然ガスだけじゃなくて石油でもあるんですけど、基本は長期契約ですけど足りないものは今の値段で買いますよというわけですよ。そうすると今、ロシアのウクライナ侵攻で天然ガスの価格がものすごく値上がりしているんですよ。だから実はこの2つの会社は今は長期契約の期間の分は値上がりしないで済んでいるんですね。現在の値段で買おうとするとものすごく上がっている。スポット価格で買うとコストがものすごく跳ね上がる。ということは、会社としてはお客さまに供給するガス代を値上げせざるを得ないという状況です」