ロシアから輸入している「LNG」が手に入らなくなるおそれも?
―――ただ、実は値上がりというのは“モノ”だけではないようですね?「政府が『節電』に続いて『節ガス』の要請も検討していると。ガスの調達が難しくなるかもと実は心配されています。その原因はロシアにあります。ガスはそのまま海外から持ってくるとものすごく体積が大きいので、液化天然ガスという無理やり圧力をかけて冷凍にして液体にするんですよね。それを『LNG』と言います。液化天然ガス・LNGにして、専用のタンカーで日本に運んできます。日本がLNGを一番輸入している国はオーストラリアで全体の36%、それからマレーシア、カタール、アメリカ、ロシア、ブルネイと続いています。ロシアからは9%のLNGを輸入してるんですが、これが入って来なくなるかもしれないということが心配されています。このロシアからのLNGというのは、『サハリン2』というところから来ています。サハリンというそもそもの天然ガスが取れる場所に“会社”があってですね、その2つ目の会社がサハリン2というんですね。大体、日本が輸入しているロシアからのLNGのほとんどはこのサハリン2から来ているんですね。パイプラインで出荷基地まで運んで、出荷基地から日本に送ると。日本とロシアの関係が良かった頃は、パイプラインをそのまま日本まで引いて、『LNGにしなければコストが安くていいんだ』なんて話をしてたこともあったんですけど、今はそうではないわけですね。このサハリン2という会社、正式にはコンソーシアムといいますが、まぁ会社だと思ってください、そこに日本の『三井物産』と『三菱商事』も出資してるんですよね。金を出してるわけです。だから、そこから長期契約で天然ガスが手に入るということになっていたんですね。ところがですね、プーチン大統領が6月30日、『サハリン2の事業主体をロシアがつくる会社に引き渡す』という大統領令に署名をしたんですね。つまり、これからはロシアがつくる会社で全部やるんだよ、ということになっちゃったんですよね。サハリン2などの会社が全部ロシアの会社になってしまうと、LNGが来なくなるかもしれないということなんです」

―――ロシア側からしても、9%といえど日本が買ってくれるというのは、「金融制裁」がかけられてるわけだから、うれしいものではないのですか?
「これね、もし日本が抜けた場合、中国が入りたくてしょうがないんですよ。つまりね、そもそもなぜ日本がロシアに対して経済制裁をしたときにこれから抜けなかったのか、なぜ引き続き買っていたのかというと、日本が抜けたら間違いなく中国が喜んで入ってお金を払うんですよ。だから、結局ロシアに対する経済制裁として効果がない。むしろ日本が損害を受ける。そのくらいなら日本はこれまで通りロシアから天然ガスを買おうという方針だったところに、こうやって揺さぶりをかけてきたということですね」
―――ロシアにとっては、中国と契約している方がメリットは大きいのですか?
「これは、どうせ9%の分を日本に売ろうが中国に売ろうが構わないわけですね。どちらでもという。だからロシアにとってはこれはあまり問題にならない。不利益にならないってことなんですね」
―――岸田文雄総理はこういった経済制裁に対する“返り血”をどれだけ予想していたと思いますか?
「岸田総理はとにかく、『これはもうロシアは許せないことだ。だから経済制裁をする』というところに、ある意味突っ走っている部分があって、外務省とかその周辺が『ちょっと突っ走りすぎじゃないの?』というふうに実は懸念をしてるってことなんですよね。やっぱり岸田総理は『とにかく倫理的に許せないことなんだ。これはとにかくロシアを痛めつけなければいけない』と言っている。その結果、ある程度返り血を浴びるだろうとは予想していたと思いますが、ひょっとしたら想定外かもしれないですね」
―――政府から要請が検討されている「節ガス」。ガスを大切に使おうという話ですが、鍵を握るのがロシアの石油天然ガス開発事業のサハリン2。実際にLNGが来なくなるということが現実味を帯びてきたみたいなタイミングなのでしょうか?
「まだ今の段階でロシアがどういう態度に出るかわからないんですね。だから、最悪に備えるという点では、もしそれが来なくなったらどうなるのかという影響を考えていこうと思うんですね」

















