「ここに来ておしゃべりするだけでも気持ち晴れるんじゃないか」

<植田麻瑚記者>
「被害の大きかった石川県珠洲市に来ています。このあたりはほとんどの住宅が倒壊しています」

石川県珠洲市で、美容室を営んでいた岸田孝子さんです。店は倒壊し、営業できなくなりましたが、石川県外の友人から道具を送ってもらい、被災者向けのカットサービスを始めようと決意しました。

<北沢美容室 岸田孝子さん>
「じゃん!新品のはさみを送って頂いて、本当にありがたいです」

カットをするには水が必要となりますが、珠洲市では、ほぼ全域で断水が続いています。そこで手を差し伸べてくれたのは、近くで温泉施設を営む男性です。

<珠洲温泉宝湯 橋元宗太郎代表>
「うちの宿泊施設の客室の土間を使ってもらえたら」

100年以上の歴史がある珠洲温泉宝湯。地震で、施設は全壊しました。しかし…

<珠洲温泉宝湯 橋元宗太郎代表>
「がれきの隙間に顔を突っ込んで探してみたら、ちょろちょろと音が聞こえて、温泉が湧き続けているのを発見した」

崩れたがれきの中をホースでつなぎ、別館の宿泊施設の浴槽に、湧き出る湯を通しました。

<珠洲温泉宝湯 橋元宗太郎代表>
「髪を切ってもらって、ぜひお風呂にも入ってもらいたいですね。少しでも元気になればいいですよね。いつも家族、子どもたちと嫁さん切ってもらってる」

<北沢美容室 岸田孝子さん>
「久しぶりやから、させてもらわんと!練習」

「どうする?」
「ジョリジョリ」
「わたしも緊張するわ、久しぶりやし1か月ぶりですよ」

場所を貸してくれた橋元さんの息子・藍十夢くんを一番にカットしました。

<橋元藍十夢くん>
「ありがとう」

<北沢美容室 岸田孝子さん>
「畑仕事とかしてたのに、みんな避難所に座ったきりでしゃべることも同じことばっかり言ってるわと聞いていたので、ここに来ておしゃべりするだけでも、気持ち晴れるんじゃないかなと思って」

住民の助け合いと行政の継続的な支援が、復興に向けて歩き出せる活力となりそうです。

これまでに派遣された静岡県の行政職員などはのべ2,371人で、現在も現地で活動しています。南海トラフ巨大地震を見据えると決して他人事ではないと、被災者の思いに少しでも寄り添えるよう業務にあたっています。