「『やろうやろう』なんて人はいなかった」

自治会長当時、名張市は各地区の自治会に200万円の予算を割り当て、地区の整備などに使うことを許可。

吉岡さんの暮らす蔵持地区以外の自治会では、その予算を街路樹の整備などにあてる所が多かったといいます。

「絶対、井戸を掘るべきだ」と言っていた吉岡さんに対して当時は。

(蔵持地区まちづくり委員会・高山正之さん)
「『やろうやろう』なんて(乗り気の)人はいなかった。でも吉岡さんが強引に推すから、そういう人だったから。仕方がないと思いながら『やってみるか!』となった」

この井戸の水は、飲料水として利用可能。

維持管理のために普段は有料で20リットルまで50円で使うことができ、災害時は市民に無料で使ってもらえるよう取り決めています。

さらに自治会では憩いの場として3年前に、この井戸水を使ったカフェスペースをオープン、コーヒー1杯が100円です。

(蔵持市民センター・三瀬幸綱センター長)
「市民センターという場所と地域の人とのつながりが、より深くなっていくと思う」

能登半島地震の発生から1か月。水の確保は改めて大事だと、住民たちは再認識することになりました。

(蔵持地区まちづくり委員会・高山正之さん)
「能登半島地震でも飲み水やトイレの水に苦労している。日本では、いつどこで地震が起きるか分からない。その時に(井戸が)役立ったら、携わった者としては、ありがたい」

伝説の自治会長、吉岡さんたちが声をあげて作った蔵持地区の井戸は今、住民たちの大きな支えとして水をたたえています。