「(トランプの)支持層にとって選挙はアメリカを根底から変えないとだめだという運動なんです…」
アメリカは何故、再びトランプ氏を選ぶのか…。
アメリカのシンクタンク『ヘリテージ財団』の元上級研究員、横江公美教授は、トランプ氏は労働者階級にかつてのアメリカンドリームをもう一度叶えてくれるかもしれないと思わせるところが上手いと語る。

東洋大学 横江公美教授
「一番注目する州はウィスコンシン州、ミシガン州、ペンシルベニア州という労働組合があり、錆びた地域(ラストベルト)。本来、労働組合ですから民主党の地盤。そこをトランプさんが取れば勝てるし、取れなければ勝てない。この地域は一番悲惨な地域。今の産業ではない地域(中略)昔アメリカがどんどん発展していた頃を作ってきた産業の人たちは、あの頃をもう一度って…。それをしてくれるのはトランプさんなんだって…」
トランプ氏がパリ条約から抜け環境問題に力を入れなかったのも、エネルギー政策を打ち出すのも工業地帯の労働者にとっては希望を与えた。“地球よりアメリカ”のトランプ氏の政策が不遇の労働者に支持されたと横江教授は言う。
かつて共同通信の論説委員長を務め、アメリカ政治や思想史に精通する会田弘継氏は、バイデン政権下でアメリカの階級社会化が一層進み、そのことがトランプ待望論に繋がったとみる。

関西大学 会田弘継客員教授
「今起きているのは左右の対立ではなく、上下の対立。階級闘争に近い…。ディープステートとか陰謀論とか…、彼ら(下層階級)にとってはそこにしか、しがみつくところがない。そのくらい追い込まれてる。何故70年代から労働者が民主党から離れたのか。産業構造が変わって、組合が壊れて行き場がなくなった…。ずーっと浮遊し続けてる…、これはアメリカに限らず先進国全体が抱えてる問題。(中略)エリートによる支配があって、どうしても疎外されて…、多くの人々が低賃金で…、そういう激しい階級社会ができてて、そういう(支配される側の)人たちに訴える言葉をトランプ氏は知ってる。でもそれは麻薬みたいなもので、ちょっと救われた気になるかもしれないが根本的に救われるわけではない」
毎日新聞の古本氏も同様に反エリート、反官僚組織という社会変革の運動がトランプ氏を求めてしまうと話す。

毎日新聞 古本陽荘 外信部長
「トランプ支持層に話を聞くとその人たちはトランプ氏のことを『彼はオネスト(正直・誠実)だと言うんです。我々と同じ言葉で本音を語ってくれる政治家がようやく現れたと…政治家の建前ではなく本音を言ってくれていると…トランプ氏が作ったのは政治運動ですね。彼の支持層にとって選挙はアメリカを根底から変えないとだめだという運動なんですね。ワシントンやニューヨークにいる一部のエリート層がおかしなことをしているに違いない…。それの象徴としてディープステートという言葉が使われるんですが…、トランプさんならそれを壊してくれるって…」
民主主義を形作る土台は選挙だ。その選挙によって民主主義的なるものの未来が揺らぎそうになっているようにも見える皮肉…ただ少なくとも民主主義ではその結果に従わなければないことだけは確かだ。
(BS-TBS『報道1930』1月16日放送より)