15年前「もしも高校野球の女子マネージャーがドラッガーの『マネジメント』を読んだら」という小説がベストセラーとなり“もしドラ”と略され流行語にもなった。だが、今メディアに飛び交う略称は“もしドラ”ならぬ“もしトラ”だ。“もしもトランプになったら…”つまり11月の大統領選でトランプ氏が勝った場合のリスクを懸念したフレーズだ。なにしろ予備選の初戦を圧勝し共和党代表が確実視されたことで、大統領選も勝利する可能性が高まり、“もしトラ”は現実味を増している。
アメリカは何故、世界的には“危ない”と見られているトランプ氏を求めるのか…。様々な立場のアメリカ人、また日本の識者に聞いた。
「大学を出ていない白人は非常に強くトランプを支持する」
各党の候補者選びのヤマ場となるスーパーチューズデーを待つことなく共和党内はトランプ氏が69%の支持を集めているという。何故これほど強いのか?
アイオワ州で長年共和党の下院議員を務めたコンロン氏は、共和党が変わってしまったと語る。

アイオワ州・元下院議員 ウォルター・コンロン氏
「昔は金持ちは共和党に投票し、中間層は民主党に投票し、貧困層は選挙に行かないもんだった。(中略)これまで10年連続でトランプ支持者以外の共和党員が支部などの運営をしていたが、直近の執行部の顔ぶれは大半が親トランプ派に取って代わった。多くは共和党の会合で見たこともない人たちだ。(私はトランプ支持ではないが)バイデンとどちらかを選ぶことになったらトランプのレバーを引くよ。引く時に指に鎮痛剤を注射してね。
仕方なくトランプを選ぶが、(ホントは)他の人の方がずっといいと思っている…」
もう一人インタビューに答えてくれた政治学者は、ニクソン政権下で共和党員になったが、トランプ政権誕生を機に共和党を離れている。

クレアモント・マッケンナ大学 ジョン・ピットニー教授
「共和党の人々はトランプの言うことが好きなんだ。殆どが『不法移民がアメリカの血を汚している』という発言を支持している。多くの人が、それが世界史の非常に酷い章(ヒトラーの著作)と似ていると指摘しても、共和党員はそのレトリックから目を背けようとしない。(中略~かつては富裕層が共和党を支持していたが)最近は主に大学教育を受けていない白人が支持する政党になった。大学を出ていない白人は非常に強くトランプを支持する。大卒、大学院卒の白人であればバイデンを支持する可能性が高い。それがアメリカ政治の大きな分かれ目になっている…」
こうした差別的分断は以前から少なからずあったが、それを常態化させ加速させたのがトランプ氏の出現だとピットニー教授は語った。かくして共和党で絶対的立場を築くトランプ氏だが、アメリカ全体の中でも半数に近い人たちから歓迎されている。