中国南部カルストの“奇岩”が生んだ絶景地帯 

「奇岩」という言葉、「世界遺産」のナレーターの杏さんは番組のナレーション原稿で初めて知ったそうです。広辞苑には「めずらしい形の大岩」とあり、確かに普通の生活ではあまり使わない言葉ですが、世界遺産、特に自然遺産ではかなりの頻度で登場します。とりわけ石灰岩の多いところでは、見事な奇岩を見ることが出来ます。

その代表ともいえるのが、中国の自然遺産「中国南部カルスト」。カルストというのは、石灰岩が雨水などで浸食されて出来た地形のことで、その名の通り、中国南部に点在する7か所のカルスト地形が世界遺産になっています。番組で撮影したのは、そのひとつの貴州省の茘波(れいは)。

貴州省・茘波の全景

キャンプ用のマットみたいに丸い円筒形の山々が連なっているのですが、これもカルスト。広大な石灰岩の層が、雨水に浸食されて出来た景観です。

茘波には小七孔(しょうしちこう)という渓谷があり、さまざまなカルスト地形を見ることが出来ます。まずは不思議な滝。普通、滝の上には川があるのですが、ここの滝は川などない山の中腹からいきなり水が噴き出しています。石灰岩の山の中にしみこんだ雨水が地下水脈を作り、それが山肌から噴出しているのです。

小七孔 山の中腹の滝

そして渓谷の底を流れる川では、小さな滝がまるで階段のように連なっています。その数、実に68!石灰岩は雨水に溶けやすく、流れる川には石灰分がたっぷり含まれています。

小七孔 階段状の滝

それが長い時間をかけて沈殿して、川の中に階段のような段差を作り、見事な景観を生み出しました。小七孔には「水中森林」といって、水中から木々がそびえる不思議な湖もあります。これは水中の石灰分が沈殿して、大きな自然の堤防が生まれて川の流れをせき止めたため、森が水没してしまったものです。

小七孔 水中森林