冬期に故障も基礎的なトレーニングで体力アップ

2019年世界陸上ドーハ
シーズンインして間もない頃の取材では、世界陸上の目標を「まずはドーハ(19年世界陸上)より上の順位に入ること」と話していた橋岡。東京五輪の6位ではなく、前回の世界陸上の8位としたのはなぜか。

「一度、我に戻るというか、自分を見返すことを考えて、世界陸上は世界陸上ととらえています」

アスリートたちはオリンピックに向けてアクセルを踏み込んでいく。そのまま踏み続けると、故障や精神的なバーンアウトなど、どこかで大きく崩れるリスクが生じる。
森長コーチは、冬期が予定通り過ごせなかったことも理由の1つだと説明した。故障をしていた時期があり、室内を転戦するプランを実行できなかった。唯一出場した3月の世界室内選手権も記録なしだった。屋外初戦でケガをしたことも、今年はじっくりやろうと考えた一因になっただろう。

それでも日本選手権で自己記録と同じ跳躍ができたのは、故障の影響で跳躍練習はできなくとも、基礎的なトレーニングをしっかり行えたからだ。橋岡は「立ち幅跳び、立ち五段跳び、ショートスプリントの数値が上がっています」と4月の時点で話していた。

と同時に「5月の試合で小さくまとまらないように模索していく」という点にも言及した。目先の技術に注力して跳ぶのでなく、自身の本来の動きをしっかり見直し、飛躍のための土台を大きくする。そして日本選手権の結果で、ベースとなる部分を大きくできた自信を持つことができた。

世界陸上の目標を上方修正しないのは、ここで欲を出さない方がいい、と気持ちにブレーキをかけているのだろう。調子が良いからと気持ちが先走ると、どこかに強引な部分が生じてケガにつながることがある。

来年の世界陸上、再来年のパリ五輪とさらにパフォーマンスを上げていくために、今季は高望みをするよりも地固めを優先する。力がついている手応えがあっても、慎重さを心がけていく。