橋岡優輝(23・富士通)が7月7日に行われた世界陸上の日本選手団結団式で、男子キャプテンに指名された。19年世界陸上ドーハ大会では8位(7m97・-0.2)、昨年の東京五輪は6位(8m10・±0)と、ともにフィールド種目唯一の入賞を果たした実績が評価された。

だが橋岡自身は「両大会とも決勝では良い跳躍ができなかった」と話している。日本のフィールド選手全体で、予選よりも決勝で記録が落ちてしまうことが課題になっている。橋岡もドーハの予選は8m07(-0.7)、東京五輪の予選は8m17(+0.4)と、決勝よりも記録が良かった。
しかしそこに関しても「東京五輪のときより自信が付いているので余裕を持って予選に臨める」と橋岡は言う。決勝で記録を伸ばせばメダルラインの8m30台のジャンプが可能になる。

日本選手権で跳躍を「取り戻せた」

日本選手権で優勝した橋岡
日本選手権の橋岡の8m27(+1.4)は、ちょっとしたサプライズだったし、後述する世界陸上の目標修正をしてもいいのでは? と思わせる内容だった。

橋岡は4月9日の屋外初戦(日大競技会)で足首を痛め、4月30日の木南記念は2本を跳んだところで途中棄権(3位=7m76・±0)。6月12日の日本選手権まで試合はすべてキャンセルしていた。8m22の世界陸上参加標準記録が未突破の状況だったが、無理に記録を狙わなくても日本選手権は3位以内に入れば、世界ランキングで代表入りが可能になる。

ところが蓋を開けてみれば、2回目の8m27で標準記録を突破し、優勝も確実にした。その後は無理は避けて3、4回目の試技はパス。5回目に「この(8m27の)感覚でもう1回跳んでおきたい」と8m21(±0)を跳び、6回目の試技は棄権した。

「今シーズンは助走の(重心への)乗り込みがあまり良くありませんでしたが、今日は伸びやかな助走ができました。久しぶりに8m36(+0.6、昨年の日本選手権で跳んだ自己記録)に近い感覚が得られた助走でしたね」

大学時代から橋岡を指導する日大・森長正樹コーチも「橋岡の特徴はタイミングを合わせるように走り、リズム良く地面に力を伝達していく助走」だという。東京五輪決勝のように体の疲れ具合によっては、がむしゃらに脚を回転させてスピードを速める必要が生じることもあるが、少しゆっくり見える助走が持ち味だ。

その基本は崩さずにアレンジを加えることで、橋岡は記録を伸ばしていける。

7月7日の結団式でも「日本選手権で助走をはじめ跳躍全体の感覚を取り戻せた」と話したが、さらに上積みをしていける手応えがあるのではないか。「取り戻せた」という言葉を強調する橋岡の話しぶりから、その手応えを感じていると推測できた。