「技術者として機械の性能踏まえ判断」

そして、能登を訪れてから5年目の夏。

「新しい矢波浄水場に設置するプラント装置は、あなたの会社のものにする方針を固めた」

宮内さんを通じて“内定”の連絡を受けた。大きな成果が遂に実ったのだと、嬉しくなった。

「とにかく私は、能登町の将来を真剣に考えた結果、あなたの会社の装置にするべきと考えた。能登町の人口は、年間に500人のペースで減少している。その現状を踏まえてだ」

ただ、宮内さんが込めた思いを聞くうち、浮き足立った気持ちでも居られないと感じ、気を引き締め直した。

「あなたの人柄や熱心さも、関係者にはよく伝わっているが、それは関係無い。あくまで技術者として、機械の性能を踏まえて判断した」

そう話す宮内さんが、初めて食事に行こうと誘ってくれたのは、それから1か月後のことだった。

記者は“2代目”矢波浄水場の完成を見届ける形でプラントメーカーを離れ、マスコミ業界へと出戻った。