乗っていて心配な車種は?周囲への影響は?
青木:この不正問題が消費者や該当車種に乗っている方に与える影響はどんなものがありますか。
森口:この同じ日にダイハツとトヨタが、ほとんどは問題ないですって言ったんですが、「キャスト」という車種、トヨタでは「ピクシスジョイ」という名前ですけども、これに関しては衝突してエアバッグ作動したときに、ドアロックが解除されない恐れがあるという発表しています。これについての具体的な対策は公表されてないので、ちょっと心配ですよね。
青木:消費者だけじゃなくて地域経済、下請けを含めた関連企業への影響もありそうですよね。
森口:もちろん国内だけでもダイハツは大阪だけじゃなくて、九州や関西の他の県とかにも工場があるので、その従業員の方も影響を受けます。また、自動車メーカーは裾野が広いので、下請けの部品を納入する会社も当然影響が出てきます。それから、工場って結構九州地区が誘致したわけで、自治体にとっては法人税など、そういう恩恵も当然あり、生産がストップすると税収に影響が出たり、さらに言えば、工場の周辺の飲食店なども影響を受けたりすると思います。
青木:そもそも今回の問題が発覚したのが、完成検査や型式の指定の認証での不正ということですけれども、これってその自動車を製造から販売していく過程の中で、どの役割を果たしているんですか。
森口:型式指定というのは普通の車は1台1台チェックをして、衝突実験とかブレーキとかランプとか排ガスとか検査しなければいけないんですけども、月に何万台造る量産車もありますから、型式指定っていうのを受ければ、個別に検査せずに済むと。逆に言うとそういう大手の自動車メーカーが造る車に関しては、型式指定は絶対必要です。それから、工場で造った最後のところで、基準に適合しているかをチェックするのが完成検査といわれていまして、当然、道路運送車両法っていう法律がありますから、これに合致してないと法律違反っていうことになる。法律は守らなきゃいけないということで、こういう検査などが行われているということになってます。
青木:型式指定での不正というのは、いわゆる金型部分をまるで何かごまかすようなことになっちゃいますから、出てきた車全部に不正の影響が出てしまってますよね。
森口:今回の発表を見てみますと、そういう金型とかを細工したっていうのはむしろ少なくてですね、数字の書き換え、要するに検査にパスするためにちょっと「盛ってしまった」っていうことですよね。それから、あとは、先ほどドアの話をしましたけど、助手席側だけテストして運転席はやらなかったなど、要するに開発期間を短くしたいっていうのと、あとはコストダウンしたかったということで、例えば衝突実験って車を1台ぶつけるので、その車はもう“オシャカ”になっちゃいます。実験にパスしないと何台も何台もぶつけるわけなので、それが開発費的に響くので、1台で合格するようにちょっと数字を盛ったという背景があるみたいです。
青木:今回の不正問題がこれから自動車産業の規制や検査のその過程にどのような影響を与えると感じますか。
森口:私も報告書をザーッと見たんですけども、日本の承認プロセスっていうのが結構細かい。以前も他の会社の不正があったときにもいわれてたことなんですけども、ちょっと細かすぎ。これ全部やるのは大変だなっていう気持ちもあります。ダイハツはアジアでも造っていて、海外向けの調査結果も今回発表されたんですが、その中でインドネシアでは、昨年中に当局の再確認が取れて、生産を再開しています。日本とインドネシアの認証のレベルの違いというところもあるので、そういう部分も、もう一度考えてもいいのかなと思います。ただ、こういうきめ細かいプロセスが日本の信頼性を生んでいることも確かなので、認証作業そのものは絶対必要で、これからもやってほしいとは思ってます。