被災者でありながらも“おもてなし”を続ける若女将の思い
藤森祥平キャスター:
七尾市の和倉温泉にある創業220年の「美湾荘」からお伝えします。

地震が発生した当時、若女将の多田さんは自分も閉じ込められるんじゃないかという恐怖のもと、とにかく「羽織るものを羽織って外に出て」と館内放送を使って訴え続けたそうです。部屋に閉じ込められてしまった人もいたようで、外階段を使って駆け上がり、バールでこじ開けて救った方もいたそうです。
この温泉街の並びにある「加賀谷」でも、最上階の20階まで駆け上がって1000人規模のお客さんを避難させるように誘導した。
お正月はこの和倉にある温泉旅館はほとんど満室になります。誰1人犠牲にならなかった、命を守りきった。いずれもこれは従業員の皆さんの判断、自発的な取り組みだったそうです。現場を見て、これは奇跡だと思いました。
現在、和倉一帯はまだ断水していて生活用水は使えません。にもかかわらず、若女将の多田さんは比較的被害の少なかった2階の広間を整理して、能登各地の通信の復旧作業にあたっている作業員の皆さんの寝泊まりする場所を確保したそうなんです。自分のことだけで精いっぱいなはずなんですが、それでも、能登全体の復旧のためのおもてなしを続けているんです。
小川彩佳キャスター:
従業員の皆さんの多くも被災者でいらっしゃるという中で、そうした対応もなさっているんですね。そして、温泉というのは石川県の貴重な観光資源でもありますから、それが今どうなっているのか、建物自体の建て直しもできるのかできないのか、そうしたことも皆さん心配でいらっしゃいますよね。
藤森キャスター:
和倉の温泉についても、今本当に出てくるのかどうなのか。断水ですし、源泉の状態もまだ把握しきれていないそうです。
それから、建物自体のチェックというのもまだ全然できていない。これからようやく専門家による確認が始まるところ。全面建て替えなのか、あるいは改修工事にとどまるのか。
ですから判断するのに時間がかかります。「復興に向けて」なんていう言葉はまだ程遠い状況なんです。
トラウデン直美さん:
こちらとしては、10日経ったから少しずつ支援が届いていたらいいなという気持ちで毎日見ているんですが、どのくらい届いているのかっていうことと、あと、今一番必要なものっていうのはどういったものなんでしょうか。
藤森キャスター:
支援についても人それぞれ必要なものが変わってくると思いますが、明日、明後日暮らしていくための物資というのは次第に集まってきているそうなんです。

ただ、その先です。そもそもここで従業員の皆さんが今後、働き続けられるのか。和倉に残りたいけど残れるのか。何よりも大切なこの働き手が離れてしまっては復興どころではありません。ですから、そのためにも、せめて当面の生活を続けられる最低限の金銭的支援、こういったものを速やかに国や自治体が動くことはできないものかと強く感じます。
それからもう一つ、多田さんがお話になっていたのは風評被害を何とか食い止めたいということなんです。3月の北陸新幹線延伸に伴って、福井県の皆さん一体になって盛り上げようと話をしていた矢先、被災してしまった。現在、福井県の皆さんは「和倉のためにも頑張る」とおっしゃってるそうです。
こちらもそういう声を聞いたら、やっぱり頑張りたいと思っている。ですから、北陸をひとくくりにして、みんなが傷付いてダメージを受けてしまったではなくて、しっかりと正しい情報を得た上で、温泉を楽しめるところは楽しめる、行けるところは行けるんだ、みんなでそういう正しい情報のもと、応援の声を出していけたら、行動できたらいいなと思いました。

















