総裁候補を持たない派閥が孕む“危険”
しかし、総裁候補を持たない派閥は行き詰まる危険を孕んでいる。

その良い例が、裏金問題に苛まれている安倍派だ。
安倍派関係者:
「去年の7月8日あの日に全てが変わったんだ。安倍さんが亡くなって全てが変わったんだ」
関係者がこう語るように、安倍派における安倍元総理の存在感は他の幹部を圧倒していたということだろう。
安倍元総理が襲撃を受け死亡してから1年半が経とうとしているが、派閥会長を決めることができずに“5人衆”と呼ばれる5人の幹部が派閥運営を担ってきた。

こうした集団指導体制に対し派内の若手からは“早く会長を決めてくれ”という声が出始めた。総裁候補を持たない苛立ちが噴出し始めたということであろう。
また“5人衆”が官房長官や経産大臣、政調会長などの枢要ポストを占めたことから、他派閥とのバランスをとるため派閥の中堅・若手が副大臣、政務官などから漏れるケースが相次ぎ、ポストへの不満も充満していた。
仮に裏金問題がなかったとしても安倍派に所属する議員たちは“誰を総理候補に担ぐか”“自分たちはどういった分野で活躍したいか”という将来への明るい展望を見通しづらくなっていたことから早晩行き詰まる可能性は、あったといえるだろう。
2024年は、政治とカネの問題はもちろんのこと派閥のあり方が問われる年になる。
なぜ派閥は長年存続してきたのか?
こうした問いかけに派閥に所属する自民党議員1人1人が考える必要があるのではないか。
(TBS政治部長 後藤俊広)
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後藤俊広
TBSテレビ 報道局政治部長
小泉純一郎内閣時から政治報道に携わる。郵政民営化を巡る自民党の小泉VS民営化反対派の闘いや自民→民主、民主→自民の2度の政権交代などを現場記者として取材する。趣味はプロ野球観戦で中日ドラゴンズの落合博満元監督を取り上げた「嫌われた監督」が座右の書
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