「天皇杯も一過性のものでは意味がない」


天皇杯獲得に向けた、有力選手集めは、地に足のついた競技力の向上になっているのか?


開催地で続く慣習に異議を唱えた県もありました。2002年開催の高知県です。当時の橋本大二郎知事が「国体の時期に合わせて一時的に県外の有力選手を受け入れるような、単に得点の獲得だけを目的とした強化策は一切考えておりません」とし、高知県は10位に。日本スポーツ協会は高知国体について、HPで「39年ぶりに開催県以外が天皇杯を獲得。『身の丈にあった国体』と評された」と紹介しています。しかし、また翌年から開催地が優勝する流れに戻り、以降開催地は1位か2位になる状態が続いています。

「国体開催地の悪しき慣習」との声も


 松山大の市川虎彦教授(地域社会学)は「開催地はブロック予選を免除され、優位になる。地方の県はその時しか上位に入る可能性がないから、開催地は有力選手を県外から集めるのではないか。国体開催地の悪しき慣習になっている」と話します。


ただ、優れた指導者を地方に呼ぶこと自体は悪いことではないとし、天皇杯獲得を目的にしたり、一時的に集中させることが問題だと話します。「優れた選手や指導者を自治体や企業が正規採用して、セカンドキャリアも保証する形で獲得した方が、長期にわたる指導で競技力の向上が期待できるし、県外の選手自身にとってもいいと思う」。
 
市川教授は、2017年の愛媛国体開催前後に、宇和島市民に意識調査を実施しました。「県外から強化選手を呼び集めてまで、愛媛県に天皇杯を獲得してほしいと思うか」尋ねたところ、「思わない」「あまり思わない」と答えた人が約8割に上ったといい、「天皇杯獲得競争は、もはや県民から乖離したものになっている。無意味な都道府県別得点争いはやめ、望ましい姿を作っていくべき」と話します。

2024年から「国民スポーツ大会」に改称する国体。名称だけでなく、その中身についても、”望ましい姿”に向けた活発な議論が求められています。