学校でお菓子を食べたことを教員から1時間半にわたって叱られ、自ら命を絶った13歳の男の子がいます。父親は「教員からのいきすぎた指導により、子どもが追い詰められ、自ら命を絶つこと」を「指導死」と名付け、経験を語り続けてきました。「指導死」を防ぐために、何が求められているのでしょうか?

「1時間半の指導…何が死に追いやったのか」指導死を無くすため訴え続け16年

日体大で講演する大貫さん

大貫隆志さん(66)
「負けず嫌いで、何でも一生懸命に取り組む陵平が、なぜ死のうって思わなきゃいけなかったのか」

12月、日本体育大学で教員を目指す大学生らに語りかけた大貫隆志さん(66)。2000年に当時中学2年生(当時13歳)だった次男の陵平さんを自殺で亡くしました。

陵平さんは、学校でお菓子を食べたことを教員から1時間半にわたって叱られ、翌日に遺書を残し、自ら命を断ちました。陵平さんを自殺に追い詰める、教員の不適切な指導があったと大貫さんは考えています。

しかし大貫さんには、この1時間半に何があったのか、当初、学校側からは十分な説明がなかったといいます。

大貫隆志さん
「1時間半の指導で何があったのか、校長に何度も質問しました。最初は答えてもらえず、学校を訪ねて問い詰めると『教員から聞き取りをしています』と校長は答えました。『聞き取りの内容を教えてください』と食い下がると、校長は引き出しからメモを取り出し、メモを読み上げ説明しましたが、聞き取りにくい部分があったので聞き返すと、1回目に聞いた内容とは全く違う回答が返ってきました。何故最初の回答と違うのか問い返すと校長は『このあと出かけなければいけないので』とそれ以上説明せず出ていきました」
「何かが陵平を死に追いやった。それが何なのかを確かめることが、親としての私の務めだと思いました。1時間半の指導でどんなことが行われていたのか、私が知りたかったそのことに学校側がきちんと答えてくれたとしたら、誰のせいにもしないという思いのままでいられたのかもしれない」

子どもの自殺の背景調査 わずか4.6% 遺族に説明していないケースも

今年、文部科学省は初めて、子どもの自殺が起きた際に学校側がどう対応し、調査しているのかについての調査結果を公表しました。
文科省の指針では、子どもの自殺が起きたときには、学校がまず事実関係の整理である「基本調査」を行ったうえで、自殺に至るまでの経緯などを「詳細調査」を通して調査すべきだとしています。

2022年度の子どもの自殺者数は411人でした。(※厚労省発表の自殺者数514人とは人数に差がある)
このうちおよそ40%のケースで「詳細調査」という制度があることや、調査の希望について、遺族に説明していませんでした。また、実際に「詳細調査」が行われたのは、わずか4.6%しかありませんでした。

令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果より

さらに、遺族が調査を求めているにも関わらず、学校側がこれを拒否する場合や、学校側が遺族からの信頼を得られずに対立することで、調査に長い時間がかかる場合もあるといいます。
こうしたことから「不適切な指導」による自殺=「指導死」として認められているケースは、ごくわずかしかありません。