韓国の情報機関も注視“北朝鮮労働者のロシア派遣”専門家の分析は?
ロシアへの労働者派遣をめぐる動きは、韓国の情報機関「国家情報院」も注視しています。12月11日、ロシア沿海地方の代表団が北朝鮮を訪れ、両国の経済協力をめぐって協議が行われました。韓国メディアは国家情報院が「北朝鮮からロシアに対する労働者派遣の動きに進展がある」と分析していると報じています。
また、消息筋によると9月に行われた首脳会談を通じ、ロシアと北朝鮮は水面下で建設作業員をロシアに派遣することで合意。ロシアが一方的に併合したウクライナのドネツク州などに派遣されるのでは、という情報もあるということです。
北朝鮮労働者が稼いだ外貨は、ミサイル開発に使われている可能性が指摘されていて、国連の制裁の対象となっています。ロシアが北朝鮮労働者を受け入れる可能性はあるのか…。北朝鮮政治が専門の慶應大学・礒﨑敦仁教授が、両者の思惑について解説します。

ーーー北朝鮮労働者のロシアへの派遣の可能性についてどのようにみていますか?
慶應大学・礒﨑敦仁教授:
北朝鮮としては労働者派遣が従来から非常に重要な外貨獲得の手段であったわけで、経済制裁で禁じられてしまったことは非常に痛いことです。一方、ウクライナ侵攻したロシアは、いまさら国連安保理の制裁決議を守るかどうかという次元では無くなっています。ロシアの労働者が不足しているのであれば、北朝鮮としては「制裁違反になるがかつてのように労働者を受け入れて欲しい」と要請してもおかしくはない状況になっているとみられます。
特に、ウクライナのドネツク州などについて、北朝鮮は“ロシアの領土”として国家承認をしているわけですから、そこでの労働力として北朝鮮労働者を受け入れて欲しいという思いは、外貨獲得目的の観点から当然あるとみられます。そして、それはロシア側の思惑とも一致するものになります。
ーーーコロナ後初の外遊先として北朝鮮が中国ではなくロシアを選んだ背景には何があるのでしょうか?
ウクライナ侵攻以降、ロシアがアメリカを中心とした西側諸国と対立する中、「反米」「反帝国主義」で一致できることが首脳会談実現の背景にあったものとみられます。
ただ、ロシアと北朝鮮がいかに接近しようとも、北朝鮮にとって、ロシアは中国に代わる存在にはなり得ません。北朝鮮にとって最大の貿易相手国は中国で貿易の9割を占めていて、中国が圧倒的に重要な存在であることに変わりません。ただ、北朝鮮としては中国だけに頼らず、リスクヘッジのためロシアとも協力をしながら独自路線を歩みたいという思惑があり、ロシアとの協力の深化というのを今は重視しているとみられます。
北京支局 松井智史