2009年12月。レディー・ガガがエリザベス女王と謁見する際に選んだのが「アツコ・クドウ」の真っ赤なドレスだったのだ。

工藤さん
「その頃ガガさんは、露出したものも多く着ていたんですが、これは女王に対してのリスペクトがあって。最初はヴィクトリア時代のスタイルのドレスという話だったんですけど、だったらエリザベス二世(女王)がいて、そこにエリザベス1世が好んだ“ひだ襟”を入れたら、女王が3人集まることになって面白いんじゃないかと。ガガさんのフィッティングの段階となって「これを着て女王に会う」と言われても、そのニュース映像を見るまでは信じられなかったです。本当に?本当に?って。私たちみたいな小さな無名なブランドを、女王に会う時の衣装として選んでもらえて、とても感謝しています」

さらにエリザベス女王は、2012年に在位60周年を記念して、ウィンザー城で写真展を開いたのだが、そこに展示された60枚の写真の1つに、この写真を選んだのだった。

工藤さん
「びっくりしました。ちょうど日本から親も来ていたので、ウィンザー城の展示会に行って、この写真が飾られているのを見たときは、本当に嬉しかったです。その前までは、まず考えられなかったので。ラテックスの歴史の中で、大きなステップ・境目というか、すごい大きいことだったんじゃないかと思います。ラテックスが普通の衣装の生地として、女王に認められた。私たちはラテックスをもっと一般的に、皆さんに着てもらいたいというのがずっとあったので。女王はとってもクールで、様々な新しいことも認めてくれて、素晴らしいと思います」

夢を叶えた秘訣、そして今後は

単身イギリスを訪れ、独学でラテックス素材を追求し、夢を叶えた工藤さん。
どのようにして苦労を乗り越えてきたのか。

工藤さん
「私は like a dog with a bone(執着するタイプ)というか、なかなかあきらめないので。ラテックスを暗い世界だけじゃなくて、全ての女性たちにパワーをあげて、もっと広いところで光ってもらいたくて。ラテックスを身にまとうと、自信を持つことができ、少し違う自分になれる気がするんです。
最初は、ちょっと普通と違うコンセプトだったのか、受け入れてもらえなかったですが、やり続けていたら、助けてくれる人や共感してくれる人に出会って。
大変ですが、何だって大変だと思うんです。でも、自分が価値があると思うことはやらないと。やりたいことがあったら、あきらめないことです。あきらめたら終わりなので」

今後ももっと、日本を含め色々な国の人たちに、ラテックスの魅力を広めたいと話す工藤さん。
そんな工藤さんの一番の理解者は、ビジネスパートナーであり、20年以上そばでサポートし続けている夫のサイモン氏に違いない。

工藤さんデザインのドレス PHOTO :Simon Hoare http://www.showstudio.com/

文:ロンドン支局 岡村佐枝子
写真:ロンドン支局 渡辺琢也 (エリザベス女王とレディー・ガガの謁見時画像を除く)