前・大阪市長の松井一郎氏が、タレントの水道橋博士さんのSNS上の投稿によって名誉を傷つけられたとして、損害賠償を求めている裁判。110万円の支払いを命じた1審判決を不服とし、水道橋さん側・松井氏側の双方が控訴していましたが、12月21日、大阪高裁はいずれの控訴を棄却する判決を言い渡しました。

▼ツイートで動画を紹介 サムネイル上の言葉と水道橋さんのコメントをめぐり…

タレントの水道橋博士さんは去年2月、別の人物がYouTubeに投稿した動画を、自らのTwitter(現:X)で紹介しました。

動画は、松井一郎・大阪市長(当時)に関するもので、サムネイルには松井氏の顔写真のそばに、「維新の闇」「…事件」「…疑惑」などの言葉が書かれていました。

水道橋さんのツイートには動画のリンクが記載されたため、そのサムネイルが表示され、「これは下調べが凄いですね。知らなかったことが多いです」など、水道橋さん自身のコメントも記されていました。

松井氏は「…疑惑」と記された部分と、水道橋さんのコメントを問題視。
▽視認性を高めることを目的に作られたサムネイルこそ、最も拡散力がある部分だ。サムネイルのみを閲覧し、その限度で内容を把握する人は相当多い 
▽『疑惑』という言葉が付いていたとしても、一般の閲覧者はサムネイルを見て、松井氏がそうした行為をしたこと、または行為をしたと強くうかがわせる事実があると認識する 
▽『下調べが凄い』などの水道橋さんのコメントによって、サムネイルに記載された内容が事実であるかのような印象を閲覧者に与えている」
などと主張。

水道橋さんのツイートが松井氏の名誉を傷つけられたとして、慰謝料など550万円の支払いを求め、去年3月に大阪地裁に提訴しました。

水道橋さんは、▽ツイートはあくまで、真偽不明の疑惑があるという事実を示しているにすぎない ▽一般の閲覧者は、サムネイルはあくまでサムネイルであり、興味喚起のためのもので動画の中身でないことは知っている ▽『これは下調べが凄いですね』という記載も、動画の中身全般についての言及だと理解できる などとして、訴えを退けるよう求めました。

サムネイルが修正されたことなどを受け、松井氏は動画の投稿者に対しては、提訴しませんでした。

▼1審の大阪地裁は名誉棄損を認定 “疑惑の確度が相当高いと閲覧者に伝えている”と判断

大阪地裁は今年5月、

▽投稿を見た人が必ず動画を視聴するとは限らないことからすれば、投稿のみを見て一定の認識を得る人は相当数存在すると言える 
▽『疑惑』と付されていることからすると、“そうした行為をした”と断定されていると閲覧者が認識するとは言えない 
▽一方で、サムネイルには『…疑惑』という言葉が、他の『…事件』といった話題と並列して挙げられていて、水道橋さんがそれらと特に区別することなく『下調べが凄い』などとコメントしていることからすれば、閲覧者は、『…疑惑』が相当に確度が高く、松井氏が“そうした行為をしたことを強くうかがわせる事実がある”と、水道橋さんが述べていると認識すると言える 

として、水道橋さんのツイート投稿が名誉棄損にあたると認定。

その上で、「投稿直後の松井氏の返信ツイートで、被害の拡大は一定程度防がれている」「動画を注意深く視聴して、松井氏がそうした行為をしたことを裏づける具体的根拠がないと正しく認識した人もいると考えられる」として、水道橋さんに慰謝料など110万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。

この判決を不服として、水道橋さん側は控訴。また松井氏側も、認められた賠償額が少ないとして控訴していました。