揺れを伴わない津波は、日本付近でも起きる。
揺れを伴わない津波の原因は、海外で発生する地震や火山噴火ばかりではない。
気象庁は2023年10月5日と9日の2回、伊豆諸島の鳥島近海を震源とする地震で津波注意報を発表した。5日は八丈島で最大20センチ、9日も八丈島で最大70センチなどの津波が観測されたが、いずれの地震も震度は0だった。なので地震の発生直後に震度速報など地震に関する情報が特に発表されることはなく、いきなり津波注意報が発表された形だ。特に9日の地震で津波注意報が発表された時は地震発生から1時間以上が経過していて、既に八丈島で40センチの津波が観測されていた。発表に時間がかかったのは津波の予測に不可欠な地震の規模(マグニチュード)が推定できなかったためで、12月2日のフィリピン沖の大地震や2022年1月のトンガ諸島海底噴火の時と同様、気象庁は津波注意報を“後追い”で発表した。
一方、米地質調査所(USGS)はこの地震の規模をM4.9と推定している(※3)。大きな地震ではなく、むしろ小さな地震の部類に入り、記者会見で説明した気象庁の担当者も「仮にマグニチュード5程度とすると、通常では津波を発生するような規模ではない」と首を捻った。その後調査や分析が進み、10月9日の地震発生前後の約1時間半に、鳥島付近でM4~M5程度の地震が少なくとも14回起きていたことがわかった。震源付近の海上で大量の軽石も見つかった。これらを踏まえ、小さな地震が繰り返し発生したことや海底火山の噴火活動が津波を発生させた可能性が指摘されている。
揺れを伴わない津波が日本付近で発生した場合は、遠地地震や海外の火山噴火と比べて距離が近いため、津波が短時間で国内沿岸に到達する危険性がある。