『ツルネ』にあなたの名前は出たことがありません
――この日の終盤、意見陳述に臨んだのは、第一スタジオにいて生存した20代の男性社員だった。遮蔽板を設置せずに青葉被告と向き合い、はじめに、青葉被告の犯行動機のひとつとなった「小説の盗作」について、こう切り捨てた。

「私は、青葉被告が盗作されたと主張している『ツルネ』のシナリオ作りに参加しました。しかし、あなたの名前は出たことがありませんし、誰もあなたの小説を読んだ人もいませんでした。京アニは、盗作とはまったく無関係です。なんの罪もない36人を、思い込みで殺したということを心に刻んでください」
「私たちの悲しみが消えることはありません。そうした現実を受けても、希望を語れるのがアニメでありフィクションだと思います。これまでもあらゆる人たちが、そうやって希望を描いてきました。それを私たちは受け継ぎます。私たちはフィクションを作る者です。だから希望を語ることをやめません」
――言葉を紡いでいくように、ゆっくり、はっきりと語ってきた男性。しかし最後に、堪えていた感情が一気にあふれ出た。