映画「ヤジと民主主義 劇場拡大版」が12月9日(土)からポレポレ東中野(東京)などを皮切りに全国で順次公開される。
ナレーションを務めたのは作家の落合恵子さん。作家活動だけでなく、原発再稼働や安倍元総理の国葬に反対するなど、政治的な発言を続け、デモ活動といった行動にも出る。人権や表現について常に発信してきた落合さんに、現在の政治やメディアの状況のなかで本作品が公開される意味についてインタビューした。

映画「ヤジと民主主義 劇場拡大版」
2019年7月に札幌で参議院選挙の応援演説にきた安倍晋三首相(当時)にヤジを飛ばすなどした男女が警察に排除された。映画は、表現の自由を奪われたとして裁判で争う過程を約4年にわたって密着取材したほか、当事者たちの知られざる思いや、異質なものを「迷惑」だと排除する社会の現状を描く。

小さなヤジすら許さない社会、民主主義はどこへ行く?
落合さんは子どもの本の専門店「クレヨンハウス」を主宰している。東京・吉祥寺の本店にお邪魔すると、小柄ながらも張りのあるよく通る声で出迎えてくれた。絵本に囲まれながらのインタビューとなった。落合さんがドキュメンタリーのナレーションを読むのは今回が初めての経験だという。

―なぜナレーションを引き受けたのか?
落合さん:
この作品の前に私は本を読んでいますので(2022年11月に同名の書籍を出版)、あの本の持ってる力強さ、素晴らしいなと思ったんですが、それが映像になってみると、更なるインパクトを持つ。私は活字で育った人間なので、活字の大切さ、また文化放送のアナウンサーもしていましたので、音声も大事なものだとわかっていたんですが、映像というのはいつも受け手なんですね。映像がどれだけのインパクトを持つかっていうのを今回、ありありと体験させていただきました。
実は落合さんに依頼したとき、事務所サイドは当初「他人の書いたナレーションは読まない」と難色を示した。完成前の仮編集した映像とナレーション案を見てもらって、承諾してくれた。
―映画のナレーションをしてみて感想は?
落合さん:
小さなヤジすら許さない社会になったとき、民主主義はどこに行ったらいいんだろうと。それがこの作品に大変興味を持った理由です。民主主義の基本というもの。それはヤジだって、発音が似ているけど「アジテーション」だって、あるいはデモだって表現の自由であり、私たちが手にできる最低限の自由なんだということを感じましたね。映画はそれを問いかけてくれている気がしてます。
音は沈黙になると、当然ながら無くなります。しかし、映像は沈黙も映すものだと私は思ってるんですね。その沈黙を映したとき、大きな力になると思いますね。
