ハマスの実効支配にガザ市民は
ではガザの市民は、実効支配するハマスを支持しているのか。
実はガザの市民も、ハマスを否定的に捉えていたということを示すデータがある。
これは、ハマスがイスラエルを襲撃する直前にアメリカの研究グループが実施したガザの世論調査の結果だ。

「ハマスを信頼しているか」という質問に対しおよそ7割が「信頼していない」と回答した。ハマスは2006年の選挙で勝利し、その後ガザを実効支配するようになった。以来、選挙は行われていない。
世論調査を行ったメンバーの1人、プリンストン大学のロビンス教授はこう強調する。

米・プリンストン大学 マイケル・ロビンス 教授
「イスラエルの指導者を筆頭に多くの人々が『ハマスに投票した市民に責任がある』と言っていますが、それは17年前の話です。ですから、この攻撃を一般市民のせいにするのは不当です。市民はハマスを支持しておらず、市民が支持していないグループが起こしたことなのです」

今年7月には、生活環境の悪化に耐え兼ねたガザの市民がハマスへの不満を示す抗議行動を起こしていた。貧困ライン以下で生活をする人口は6割を超えていて、市民は食料の確保にも困っていたのだ。
デモを配信したAP通信は警察がすぐに抗議行動を中止させ、周辺で撮影していた人たちの携帯電話を破壊し、数名を逮捕したと伝えている。
米・プリンストン大学 マイケル・ロビンス 教授
「ハマスは独裁政権です。言論の自由は認めていません。秘密警察があって、彼らが秩序や治安を維持しようとしています。こういった環境の中で反対派を取り締まり、市民を完全に掌握しようとしています。自由に意見を言い政府を非難する人々の権利を制限するのがハマスのやり方です」

また、ガザ市民の7割がパレスチナとイスラエルが共存する平和的解決を望んでいた。だが、攻撃を受ける今、人々の考えは変わってきているかもしれないという。
――この戦争の後にハマスへの支持は高まると思いますか?
米・プリンストン大学 マイケル・ロビンス 教授
「ガザが破壊されてしまって、(平和的に)イスラエルとパレスチナの間での解決は考えられなくなっているかもしれません。今後、状況は変わるかもしれませんが、ハマスが爆撃などに抵抗している間は、市民はハマスに同情しやすく、支持率は高まるのではないでしょうか」