新谷は区間記録更新でマラソン日本記録に弾み

新谷は9月のベルリン・マラソンで日本記録(2時間19分12秒)更新を狙ったが、2時間23分08秒で11位。MGCファイナルチャレンジで設定記録(2時間21分41秒)を破ってパリ五輪を目指す選択肢や周囲の声もあるが、新谷自身は日本記録更新にこだわっている。来年3月の東京マラソンか、4月以降の海外マラソンがその舞台となりそうだ。

勝負が重要という言葉は、同じレベルの記録を持っていて初めて言えること。記録に大きな差があったら、勝負ができる位置にすらいない。長距離種目はアフリカ勢とのタイム差を考えたとき、まずは日本記録レベルを上げなければ始まらない。新谷の記録更新へのこだわりは正論であり、その情熱は半端ではない。

普段の新谷であれば、東京五輪(10000m21位)後がそうだったように、ベルリンでの失敗後は落ち込んでも不思議ではなかった。どうしてすぐに立ち直ることができたのか。
「ヒューストン終わったあとに、今季はベルリンとクイーンズ駅伝は絶対に役目を果たさないといけない、と目標を立てました。ベルリンの後に脚をケガしたとか、体調が整わないとかがあればどうなったかわかりませんが、すぐにクイーンズ駅伝に優勝したい、マラソンの日本記録に挑戦したい、と考えられました。ベルリンが5月とか6月だったら引きこもっていましたね。良いタイミングでクイーンズ駅伝があったんです」

新谷の特徴も廣中と同じで、自分のリズムで押し切る走りである。昨年の3区区間賞は、2km付近で廣中と加世田に引き離され、「自分がやりたかった展開ではありません。(自身の区間記録より48秒悪く)このスピードではマラソンにつながらない」と不機嫌だった。

3区は今年から中継所の変更で距離も変わる。新谷自身の区間記録との比較ができなくなるが、旧コースでの区間記録のときは1km平均3分03秒49で走り切った。5km通過は15分10秒台ならそのときと同じペースということになる。

5区の五島が2年前に出した区間記録は31分28秒で、新谷も1秒差の31分29秒で走った。起伏も3区より大きく向かい風も多くなる。1km平均は3分08秒80で、5km通過が15分40秒台なら区間記録ペースだ。

新谷が3区か5区で区間記録ペースの走りができれば、マラソンの日本記録更新の可能性が一気に高くなる。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)
※写真は廣中選手(左)、新谷選手(右)