事故で夢はかなわず…でも人生どうなるかわからない!

 いついかなる時も常に前向きで、積極的に行動する海さん。もともとポジティブな性格だったと言いますが、事故をきっかけに気持ちに変化もあったそうです。

 海さんが小学生のころに描いていた夢は、テレビや舞台の「大道具さん」でした。しかし、足の切断によってその夢は叶わず、今は大道具さんとは正反対の表舞台に立つ仕事をしています。

「何がきっかけで人生どうなるかわからないからこそ、今を全力で楽しみたいって気持ちは強くなりました」
 どんな話を投げかけても屈託のない笑顔で答える海さんですが、この時の表情は確固たる信念をもった強い表情に私は感じました。

「(エレベーターやスロープをつけるなど)環境を変えようとするのではなくて、人の心を変える。人のサポートや優しさがあればクリアできる。それが心のバリアフリー」
 エレベーターがない飲食店に背負われて入る際に話した、海さんのバリアフリーへの考え方です。私が見た動画の中で、強く印象に残っている言葉でした。
 同じことを、今回のインタビューでも話していました。

「あるに越したことはないけど、これまでの景観を変えてまで作る、物理的なバリアフリーはなくていいと思う」

「よく『障害を負ってできなくなったことはなんですか』と聞かれます。確かに一人でできなくなったことは増えたと思う。でも、誰かの手助けがあれば解決できることの方がいっぱいあるから、本当にできなくなったことはあんまりないと思う」

 その言葉に私は、ハッとしました。
 車いすの人だから助けるのではなく、そこに困っている人がいるから手伝う。反対に自分が困っているときには誰かに手を貸してもらう。
 言うのは簡単でなかなかできることではありませんが、それこそがすべての人にとって理想の社会の在り方なのかも知れません。そして、海さんの周りではその理想の社会が構築されているのです。