海さんが積極的に利用する“SNSの特性”とは

「福祉やバリアフリーに興味がない人に届いて欲しい」
 これが、海さんがSNSで発信を続ける理由です。

「私が発信している情報に興味を持って見てみたら、たまたま車いすユーザーで、車いすユーザーの目線も知れた、こんな風に生活してるんだってことを知るきっかけになってほしい」
 そもそも、健常者の日常生活において、車いすユーザーと接する機会が少ない、と海さんは言います。
「馴染みがないからよくわからない」というのが障がい者と健常者の一番の「壁」になっていて、だからこそ多くの人に見てもらいたいと考えています。

 海さんの動画のサムネイル(動画を再生しなくても、大まかな内容がわかるように表示する画像)は、あえて車いすユーザーだとわからないようにしているものもあります。私自身、純粋に海さんの可愛らしさに引き付けられて、動画を再生して、そこではじめて障がいがあることを知りました。

 私がそうであったように、福祉に関心がある人が、能動的に検索して探すのではなく、世界中の不特定多数の人に“偶然見てもらえる”という、まさに海さんが望んでいる特性をSNSは持っているのです。

「車いすのモデルさん」ではなく、「葦原海」として社会に認識され、その存在が確立される日を目指し、海さんは活動の幅を広げていきます。

「足は姫にあげた」前だけを向いて力強く生きる

 海さんのYouTubeのタイトルは「みゅう💛足は姫にあげた」。
 「姫」というのは、美しい声と引き換えに、人間の足をもらった「人魚姫」のことを指します。取材者である前にファンである私は、移動中の車内でこっそりとプレゼントを渡しました。人魚姫のイメージで、ターコイズブルーのドライフラワーを添えたクッキー缶です。

 仕事の場で、個人的にプレゼントを渡すなんてことをしていいのかと恐縮する私に、海さんは「かわいい!これと一緒に写真撮ろう!」と言ってくれました。

 裏表のない明るさと人懐っこさが、多くの人々を巻き込んで動かし、“心のバリアフリー”で溢れる社会を実現していくのだと確信しました。
 
 海さんはこれからも、前だけを向いて力強く車輪を回していきます。

葦原海(あしはら・みゅう)さんとHBC森田絹子アナウンサー