小海が世界を目指すレベルに成長、古川と新人・飛田が鍵を握る
第一生命は前回8位と、5年ぶりにクイーンズエイト(8位入賞、翌年の出場権を得られる)に復帰した。その原動力は3区を走った小海だった。区間4位でチームを11位から9位に浮上させた。インターナショナル区間の4区(3.6km)で10位に後退したのはやむを得ない。5区で9位に再浮上すると、アンカーの6区(6.795km)櫻川響晶(21)が1人を抜いて8位でフィニッシュした。
小海は高校2年時の全国高校駅伝1区でも区間賞を取り、チーム(仙台育英高)を優勝に導いた。5000m15分23秒98は、現チームで一番のスピードを持つ。前述のようにアジア選手権では、本人が想定しなかった優勝という結果を持ち帰った。しかしその経験から、競技に取り組む意識が大きく向上。今では「日本代表になるだけではなく、世界で戦いたい」と思っている。
「前回のクイーンズ駅伝は追う走りをしないといけませんでした。最初からキツかったのですが、3区の中間点付近が(仙台育英高近くの)見慣れた光景で、苦しいけど頑張ることができました。後輩たちも沿道から応援してくれました」
9月に故障があってアジア大会を欠場したが、その後は順調に回復し、「練習的には80%」というレベルまで来ている。今年も「3区の準備はしています。世界陸上で7位に入賞された廣中(璃梨佳、22、JP日本郵政グループ)さんが今年も3区なら、昨年の47秒より差を縮めたい」と意欲的だ。
2年連続1区の出水田眞紀(27)が、今季は1500m以外で結果を残していないが、2年連続2区だった古川結美(22)が5000mの自己記録を15分37秒12まで上げてきた。
「入社して一番、状態が良いですね。1区を走りたい気持ちが大きいのですが、どの区間でも区間入賞(区間8位以内)が目標です」
新人の飛田凜香(22)への期待も大きい。学生時代に5000mを15分47秒59で走り、日本インカレ10000mは3年時に2位、4年時に3位と好成績を残してきた。ロードにも強くハーフマラソンでは、1時間10分10秒の学生歴代3位を今年1月にマークした。
山下佐知子監督は飛田の上りへの適性を問われると、「オールマイティの選手」と答えた。上りのある1区への起用も考えられる。ハーフマラソンの実績から、1区に小海を起用したときには飛田の5区も考えられる。MGC前の鈴木の米国高地トレーニングへ、練習パートナーとして参加することも自らアピールした。強くなるための気概も十分ある。
古川と飛田が与えられた区間で力を発揮すれば、鈴木と小海が上位の流れで走ることができる。2枚看板以外の選手層は、積水化学や資生堂、日本郵政と比べると薄いことは否めない。だが今の第一生命は、誰かがキッカケとなる走りをすれば、優勝争いを維持できる雰囲気が感じられる。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)
※写真は(左)鈴木優花選手(右)小海遥選手