支持率「危険水域」でも“岸田おろし”の動きなし

6月に亡くなった青木幹雄元官房長官は、内閣支持率と与党第一党の政党支持率を足した数字が「50」を切れば政権が倒れるという「青木の法則」を提唱したとされる。今回のJNN世論調査で照らし合わせれば、内閣支持率「29.1」、自民支持率「26.2」で「55.3」となるので、まだ大丈夫とみるべきか、危険水域とみるべきか。いずれにせよ、この“危険水域”でも「岸田おろし」は起きそうもない。自民党の世耕弘成参院幹事長が「物価高に対応して何をやろうとしているのか、世の中に全く伝わらなかった」などと代表質問で公然と反旗を翻したが、このような身内からの反発は、広がりに欠いている。

その理由は、衆目一致する「ポスト岸田」が不在なこと、野党がまとまりに欠いていること、衆院選挙まで時間がある、ことなどだろう。この点、総裁選と衆院選挙まで時間がなかった菅前総理とは事情が異なる。

今回の世論調査の結果をみても「岸田総理にいつまで続けて欲しいか」との問いに対し、半数以上(自民党支持層では6割以上)が「来年9月の総裁任期まで」と答え、「すぐに交代して欲しい」と答えた人は全体で28%、自民支持層では15%だった。

8月にも同じ調査をしたが、「すぐに交代して欲しい」はこの3か月で微増(+5%)だった。おそらく有権者も、なかなか次の総理像を描けていないのが現実だろう。

一方、「次の総理にふさわしい人」も大きな変動はない。小泉進次郎元環境大臣、石破茂元幹事長、河野デジタル大臣の3人の“常連”は3か月前の調査と比較しても、誤差の範囲でそんなに数字に変わりない。

ただ3か月まえの調査では「その他議員」を答えた人が全体の3%だったのに対し、今回は16%に上昇していて、「次の総理」も群雄割拠の状態といえる。「それだけ自民党議員は層が厚い」と主張する人もいるが、あくまで野党と比較であって、有力な“ポスト岸田”がいないのが、与野党関係者の大方の見方だ。

このまま岸田内閣の支持率が続落するのか、まだ予断を許さないが「今は先送り出来ない課題に、一意専心取り組む」この総理の決意通り、国民が求める物価高対策やデフレ脱却、賃上げなど、結果を出さない限り支持率回復は見込めない。

TBSテレビ政治部 世論調査担当デスク 室井祐作

【調査方法】
JNNではコンピュータで無作為に数字を組み合わせ、固定電話と携帯電話両方をかけて行う「RDD方式」を採用しています。
11月4日(土)、5日(日)に全国18歳以上の男女2570人〔固定1014人,携帯1556人〕に調査を行い、そのうち47.2%にあたる1213人から有効な回答を得ました。その内訳は固定電話611人、携帯602人でした。
インターネットによる調査は、「その分野に関心がある人」が多く回答する傾向があるため、調査結果には偏りが生じます。
より「有権者の縮図」に近づけるためにもJNNでは電話による調査を実施しています。無作為に選んだ方々に対し、機械による自動音声で調査を行うのではなく、調査員が直接聞き取りを行っています。