「Aの体はサンダルを履いたまま静止した」夢に現れた死刑囚

1981年、東京都心のビルの火災現場から2人の遺体が発見された。

A元死刑囚は会社の金の使い込みが発覚し、上司とビルの警備員を殺害し、自分の服を警備員に着せ替えて偽装、放火して逃走した。数年後Aは逮捕され、死刑が確定した。

Aの執行に立ち会った刑務官が刑場での葛藤を語った。

東京拘置所 元刑務官
「執行の朝、Aを独房に迎えに行きました。Aが『ちょっとトイレに行かせてください』と懇願しました。執行後の排泄物を垂れ流した姿を見られたくないのだと直感しました」

「当時の東京拘置所の刑場は平屋の一戸建てでした。渡り廊下が途切れて50メートルほど外を歩きます。Aは堂々と歩きました。勿論、命乞いのようなことも一切ありません」

「普通、落下直後、ロープに繋がれた死刑囚の体は激しく揺れ動き、サンダルは遠くに飛んでしまいます。しかし、何と落下したAの体はサンダルを履いたまま静止したのです。排泄物の垂れ流しもありませんでした」

「先輩が『決まった』と呟くのが聞こえました。『苦しませなかった』という意味です」

「死刑囚の最期の意地を見た思いがして震えが止まりませんでした。その夜からサンダルを履いたAが三日三晩、夢に現れました」

「サンダルですか?履かせたまま執行します。踏み板は鉄製なので冷たい思いをさせたくないのです。最後の気遣いです。遺骨は弟が受け取ってくれるはずでしたが、断られました。無縁仏になったと聞いています」