「すべての人に平等な読書の機会を」と訴えている、芥川賞作家の市川沙央さんに、ホランキャスターがインタビュー。
「怒りだけで書きました」そう語る市川さんにとっての平等とは?
芥川賞作家・市川沙央さんが小説を通して訴える「読書バリアフリー」
この日、インタビューに応じてくれた、話題の芥川賞作家・市川沙央さん(44)。
ホラン千秋キャスター
「『ハンチバック』で芥川賞を受賞されて、改めて反響はいかがですか?」
市川沙央さん
「去年まで全くただの病人だったので、これだけ急に注目されるのは、私かヌートバー選手ぐらいだと思っています」

10歳の時に筋力などが低下する筋疾患の難病「先天性ミオパチー」と診断された市川さん。人工呼吸器をつけていて、声を出すのが難しいといいます。

「ハンチバック」はそんな市川さんと同じ病気の女性が主人公の物語です。
ホラン千秋キャスター
「贈呈式のスピーチがもうぶっ刺さってしまいまして」

ホランキャスターにぶっ刺さったという市川節がこちらです。
市川沙央さん(贈呈式会見 8月)
「私がしゃべると炎上するので気をつけたいと思います。まあでも昔、ナベツネ(渡邉恒雄氏)が言ってました。『悪名は無名に勝る』」
「怒りだけで書きました。ハンチバックで復讐をするつもりでした」

ユーモアを交えながらも、「ハンチバック」では「復讐をするつもりだった」と話します。
ホラン千秋キャスター
「普段そのドロドロした『怒り』という部分は市川さんはどう抱えていた?」
市川沙央さん
「どんどん蓄積していったんだと思います。それが今回の小説で爆発したのかなと」
市川さんの「怒り」が爆発した「ハンチバック」にはこう書かれています。
「私は紙の本を憎んでいた。目が見えること、本が持てること、ページがめくれること、読書姿勢が保てること、書店へ自由に買いに行けること、―5つの健常性を満たすことを要求する読書文化のマチズモ(健常者優位主義)を憎んでいた。その特権性に気づかない『本好き』たちの無知な傲慢さを憎んでいた」

市川沙央さん(芥川賞受賞会見 7月)
「私が一番訴えたいのは、やはり『読書バリアフリー』が進んでいくこと」

市川さんが訴える「読書バリアフリー」とは、重度障害者や視覚障害者など、誰もが読書を楽しめる環境を整えるようにすること。
読書環境の整備を国や自治体の責任と定めた「読書バリアフリー法」も施行されていますが、取り組みはなかなか進んでいません。
市川沙央さん
「本を両手で支えながら読むことは、とても体に負担がかかります。(本を)管理したり、持ち運ぶことが私の身体ではとても難しいです。私にとっては電子書籍はとても福音でした」
ホラン千秋キャスター
「電子書籍化が進んでいく中で、紙の本を惜しむ声がいろんなところである」
市川沙央さん
「階段だけだとのぼれないけれども、エレベーターをつけてくれれば2階にあがることができる。でもだからと言って階段を無くせとは私は言っていないんです。大切なのは選択肢を確保して欲しいということです」

大切なのは、あらゆるニーズに対応するための「選択肢」を基本的な設備として用意することだと話します。
市川沙央さん
「大事なのは、平等。社会がフェアであるかだと思っていて、本を読みたいということは、思いやりで与えられるようなことではない。あらゆる人のニーズに対応する選択肢を用意していくことが大事」
