■「人災になりますよ、今手を打たなければ」届かない声 動かない県
盛り土については静岡県も把握していながら消極的な姿勢だった。
2014年8月、広島市では大雨による大規模な土砂崩れが起き、死者が77人にのぼった。
この翌日、静岡県に盛り土の危険性を訴えたのがA氏のもとで働いていた男性だ。県に上申書を提出し、その時の様子を録音していた。
男性(男性と県の会話とされる音声 2014年8月)
「昨日の広島の災害事故のニュースを見ても、同じことが伊豆山の不法投棄によって起ころうとしています。もし私の訴えが軽んじられるようであれば、大災害が起きたら、これはまさに一市民の訴えに耳を貸さなかった行政の怠慢による人災と言わざるを得ません」
静岡県(男性と県の会話とされる音声)
「県を通して県から告発する方法もあるけど、直接警察に行ってもらう方が手っ取り早いというか」
男性
「なぜ私が警察に行かなきゃならないんですか?これを指導するのはおたくたちじゃないんですか?もっと上層部で動かなきゃ無理でしょう。これみんな土砂崩れじゃないですか。緊迫感が違うんだ」
静岡県
「伝わってないところもあるものですから」
男性
「緊迫感が違いますよ。人災になりますよ。今手を打たなければ」
男性は数年にわたって何度も盛り土の危険性を伝えたというが、県は
・上申書を受け取った認識はない
・男性の相談を受けたのは廃棄物の不法投棄を扱う部署だったため危険性を重く捉えられなかった
としている。
静岡県 難波喬司副知事(当時)
「結果的に防げなかったというのは事実ですから。あれだけの方が亡くなり、まだ行方不明の方がおられる。それに責任がないとは言えない」
土石流が起きた10か月後の5月末、熱海市は残った盛り土の土砂を撤去するようA氏に初めて措置命令を出した。
■遺族語る「無能な行政とおとなしい住民がセットになると悪徳業者はびこる」
土砂流災害で、母親の陽子さんを亡くした瀬下雄史さん(54)は、住民も声をあげなければ危険は防げないと考えている。
瀬下さん
「悔しいという思いはもちろんありますし、悲劇を二度と起こしてはいけないという使命感がある。無能な行政とおとなしい住民、これがセットになると悪徳業者がはこびる。真相究明と裁判を通じて責任追及をしっかりしていくこと。業者にとって厳しい判例を残すことが、将来的な抑止力になっていくと思う。それこそが再発防止に繋がっていくと思っている」
(報道特集 2022年6月25日放送)
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