ついに高熱隧道に…暑さとにおいを体験

作家・吉村昭が小説「高熱隧道」で困難なトンネル工事を描いています。

岩盤の温度が160度にもなり、作業員に黒部川の水をかけながら工事が進められます。黒部川の雪解け水は温度が4度と、冷たい水ですが、作業員にはこうした冷水をかけながら掘り進んだといいます。しかし、ダイナマイトが自然発火、作業員が死亡する事故が起きてしまいます。日本が戦争に突入しようとする時代、急峻な黒部川の水力発電が必要とされ、工事は国家的な使命を帯びて、多くの犠牲者を出しながら進められました。

車内にオレンジ色の光がさしてきました。高熱隧道に到達したのです。トンネルの岩盤も掘削機で掘った生々しい跡が見えます。

黒部峡谷ガイドセンター 高橋誠さん:「白く見えるのが“湯の花”です。ちょっとにおいますかね」

高温の岩盤から温泉が噴き出したのです。硫黄のにおいが漂います。しかし、現在の温度は160度からはかなり下がったそうです。

黒部峡谷ガイドセンター 高橋誠さん:「今は平均40度と言われています」

機関車の中には防煙マスクも設置されていました。岩盤には薬剤が吹き付けられ、安全対策が施されているそうです。

トンネルを抜けると外は標高859メートルの仙人谷(せんにんだに)。立山方向には落差165メートルの雲切(くもきり)の滝、そして仙人谷ダムが見えます。ダムで働く作業員の姿も見えました。

続いて黒部第四発電所、通称“くろよん”を見学。巨大な水車を見ることができました。

記者:「すごい傾斜で先が見えないですね」

次に乗るのは、“くろよん”建設のための資材を運んだ「インクライン」です。