「日本はペルシャ湾と中東ではこの地域の国々の間に存在する地政学的な緊張に入り込まないようにしている」

林芳正氏は外務大臣だった今年8月イランのアブドラヒアン外相と会談している。イランと言えば日本の同盟国アメリカと最も仲が悪い国だ。

しかし、日本はアメリカと仲良くしながら中東諸国と絶妙な距離感で付き合ってきた。例えばイラン…。

1953年「日章丸事件」…アメリカ・イギリスがイランの石油輸出に制裁をかけた際、日本は出光興産の「日章丸」で極秘裏にイランの石油製品を輸入した。

1980~88年「イラン・イラク戦争」…アメリカがイラク支持の中、安倍晋太郎外相がイラン、イラク双方を訪問し仲介を模索。さらにアメリカの自衛隊派遣要請を拒否。

2019年…アメリカ・イランの関係が悪化する中、安倍晋三総理が日本の総理として41年ぶりにイランを訪問。

そのイランが今日本の中東外交に期待しているという。テヘランのシンクタンク、イラン中東戦略研究所に聞いた。

中東戦略研究所ペルシャ湾岸地域研究部長 ジャバド・ヘイラニアン氏
「イランは日本を欧米諸国のような介入国家とは見ていない。日本を人権問題においても欧米諸国による介入とは違った種類の糸口を見つけることができる国だとみなしている。(中略)
トランプ政権下、ペルシャ湾地域における緊張が最高潮にあった時でも、日本はアメリカ海軍と結託しなかった。更に安倍総理は核合意においてイランとアメリカを仲介することを意図していた。(中略)日本はペルシャ湾と中東ではこの地域の国々の間に存在する地政学的な緊張に入り込まないようにしている。自国とその地域の国々との関係を均衡のとれた状態に維持しようとしている。」

イランの日本への友好姿勢は林芳正氏も驚くほどだったという。

自民党・衆議院議員 林芳正 前外務大臣
「私もびっくりしたんです。日本が中立的に見られてるっていうのは聞いてはいたんですが、実際にイランの外務大臣と話しても非常に腹を割ってね…。あの会談の後も二人だけで話したりしてね。そういうことができるんです。それを見たフランスの外相が『どうして日本はそんな風にイランと話ができるんだ』って聞いてきました。で、ヨーロッパ側からイランにこういう風に言ってくれって頼まれたりね」