なぜ「真実告知」するのか

このように子どもに出自を伝えることは「真実告知」と呼ばれています。ただ、告知と言うと堅苦しいイメージを持たれることが多く、養子縁組のあっせんを行っている「環の会」は、「Telling(テリング)」と表現しています。

「Tell(話す)」と「Ing(続ける)」を組み合わせた造語で、子どもの生い立ちについて日々の生活の中で話し続けてほしいとの思いが込められています。テリングによって、子どもは“産みの母親”に対し「遠く離れた親戚」のような感覚を持つと言います。

認定NPO「環の会」 星野寛美さん:
「隠さずに育てて大丈夫なの?とよく聞かれることがありますが、20歳30歳になった子どもたちは、きちんと受け止めながら育っています。かつては隠すのが当たり前みたいな雰囲気もありましたが、隠すエネルギーがあったら子育てにエネルギーを注いでほしいと思っています」

「環の会」星野寛美さん

「真実告知」をしない方針の家庭もあるそうですが、星野さんはこれまでの経験から養子縁組を子どもに隠し続けることは不可能だと考えています。子どもは幼い頃から、日々の生活の中で「何かおかしい」と気付くと言います。両親が何かを隠している気配を敏感に感じ取るのかもしれません。子どもが突然、事実を突きつけられた悪影響の方が大きいと星野さんは話します。

認定NPO「環の会」 星野寛美さん:
「子どもからすると『あれ、変だな?』というのは気付くもの。気付いていながら本当のことを聞けないとか、親も言えないというのは息苦しくなるのではないでしょうか。例えば18歳や20歳で突然言われたら、今まで嘘を付いていたのかとそんな状態になってしまうので好ましくありません」