迎え入れた子どもと戸籍上も“実の親子”となれるのが「特別養子縁組制度」です。この制度で家庭を得たある男性は、自分の経験を積極的に発信しています。当事者だからこそ見えてくる現実、そして、生涯をかけ制度創設に尽力した1人の医師の「葛藤」に迫ります。
「実の親子関係」になる特別養子縁組
日本で「特別養子縁組制度」の運用が始まったのは、今から35年前の1988年。民法817条に特別養子縁組の規定が付け加えられ1988年に施行されました。普通養子縁組と異なるのは、家庭裁判所での審理を経て、迎えた子どもと「実の親子関係」になれるということ。戸籍謄本にも「養子」ではなく「長男」「長女」などと記載されます。司法統計で数字が確認できる2000年以降だけでも1万241組が特別養子縁組で新たに家族となっています。
制度開始から35年。運用が始まって間もない頃に特別養子縁組で家庭を得た子どもたちは、自立して社会人として生活しています。中には、自分が養子だったことを積極的に発信しながら、制度への理解を深めてもらおうと活動している人たちもいます。
静岡県浜松市で建設関係の会社に勤める志村歩さん(24)も積極的に活動する1人。志村さんは、2022年に設立された養子の当事者たちでつくる団体「Youthの会」の代表を務め、週末には講演活動で様々な地域に足を運んでいます。

志村歩さん:
「養子の当事者同士の交流はもちろん、情報を必要としている人たちへの発信もできるので、結成して良かったと思っています。児童相談所や子どもを迎えたい親御さんたちの研修会に呼ばれて話をすることもあります」