10月15日にMGC(マラソン・グランドチャンピオンシップ)が東京・国立競技場を
発着点とする42.195kmのコースで開催される。MGCは東京五輪前の19年に始まった、上位2選手が翌年の五輪代表に決定する選考レース。以前のような複数の選考会から代表が選ばれるのでなく、一発勝負的な要素が強い。4年前がそうだったように、火花が散るような激しいレースが期待できる。
今大会の上位候補には駒澤大出身選手が多い。前回MGC4位の大塚祥平(29、九電
工)、昨年の世界陸上オレゴン13位の西山雄介(28、トヨタ自動車)、今年の世界陸上ブダペスト12位の山下一貴(26、三菱重工)、今年3月に2時間05分59秒の日本歴代4位をマークした其田健也(30、JR東日本)ら7人が出場する。
彼らの学生時代を指導した駒澤大の大八木弘明総監督(65)に話を聞いた。
■大八木弘明総監督プロフィール
1958年7月30日生まれ。会津高田一中で陸上競技を始め、会津工高を経て、実業団の小森印刷(現小森コーポレーション)で走り続けた。24歳で駒澤大の夜間部に入学し、川崎市役所で働きながら学生の大会で活躍し始めた。箱根駅伝は1年時の5区と3年時の2区で区間賞を獲得。卒業後は実業団のヤクルトで走り続けたが、日本代表になることはできなかった。95年4月に駒澤大のコーチに着任。02年4月に助監督に、04年4月に監督に昇格。97年の出雲全日本大学選抜駅伝優勝を皮切りに、学生3大駅伝で母校を27回優勝に導いた。23年3月をもって監督を、教え子でマラソン元日本記録保持者の藤田敦史現監督に譲り、4月からは総監督としてOBの田澤廉(22、トヨタ自動車)や鈴木芽吹(駒澤大4年)、佐藤圭汰(駒澤大2年)ら、日本代表を目指す選手たちを中心に指導を継続している。
▼学生3大駅伝優勝回数(コーチ&監督として)
箱根駅伝優勝8回
全日本大学駅伝優勝15回
出雲全日本大学選抜駅伝優勝4回
【駒澤大出身の五輪&世界陸上代表】
▼マラソン
藤田敦史(99、01年世界陸上)
西田隆維(01年世界陸上)
二岡康平(19年世界陸上)
中村匠吾(21年東京五輪)
西山雄介(22年世界陸上)
山下一貴(23年世界陸上)
▼10000m
宇賀地強(13年世界陸上)
村山謙太(15年世界陸上)
田澤廉(22、23年世界陸上)
有力選手の学生時代
4年前の前回MGC。駒澤大出身の中村匠吾(富士通)が優勝し、駒澤大の大八木弘明総監督(当時監督)と抱き合ったシーンが印象的だった。日本代表は何人も輩出していたが、五輪代表は中村が大八木門下生選手としては初めてだったのだ。
それから4年。今回のMGCでは駒澤大出身選手が優勝候補として多数、名前を挙げられている。前述の4人の他にも19年世界陸上ドーハ大会代表だった二岡康平(29、中電工)、2時間7分台の自己記録を持つ小山裕太(29、トーエネック)初マラソンで2時間8分台をマークした中西亮貴(27、トーエネック)が出場する。MGC出場大学別人数で7人は、青山学院大と並び最多人数である。
MGCを前に大八木総監督に、彼らの学生時代を振り返ってもらった。
・山下一貴
「山下はスタミナがありましたね。野尻湖(駒澤大が合宿する練習場所。起伏の激しい練習コースが有名)でも40km走、45km走をやったけど、40km走を簡単にやっていた。暑さにも強かったし、なにせ人一倍食べるから。一番最後まで食堂にいる選手でしたね。だからスタミナもついたのでしょう。世界陸上ブダペスト(12位。40kmまで5位だったが痙攣が出て後退)は惜しかったね。しかしレース後に『脚が攣(つ)っちゃいました』と話す様子は、(91年世界陸上金メダリストの)谷口浩美さんがバルセロナ五輪で『こけちゃいました』と話したのと同じ雰囲気がありました。モノを持っていますね」。
・大塚祥平
「3年生でびわ湖マラソンに出場する予定でしたが、体調を崩して出られませんでした。4年生でなんとか、と思って練習して、2時間15分台でしたが経験させてあげられたことは良かったかな。箱根駅伝の山登りの5区で区間賞を取りましたが、とにかく距離走ができた選手でした。40km走をやっても後半落ちなかった。コツコツ練習する姿が印象に残っています。(今年2月の)大阪マラソンでは32~33kmまでトップ集団でしたが、そのくらいの距離までは絶対に行ける選手です。大阪ではそこで自重して前を追わなかったのですが、MGCでは勝負をするでしょうね」。
・西山雄介
「西山はスタミナ型の大塚や山下とは違って、スピード型の選手でした。しかし同学年にもっとスピードのある選手がいて勝てなかった。今から思えば、大学時代にもっとスピードを研いておけば良かったかな、と思います。実業団に行って10000mの27分台を出したらマラソンをやる決意を持っていました。先輩の中村匠吾が同じタイプの選手で、同じパターンでマラソンに取り組んでいきました。MGCでは先輩と同じこと(優勝)をやりたいのだと思います」。