■銃剣とブルドーザーで否応なしに家を破壊…伊江島焼き払い事件
1956年夏、沖縄を留守にしていた亀次郎が、屋良に一通の電報を打った。
「伊江島焼き払い事件」とは、アメリカ軍が、伊江島で農地にガソリンをまき作物ごと焼き払った事件のことだ。
沖縄本島の北西に浮かぶ伊江島は、77年前、激しい戦場だった。沖縄戦で住民の半数が犠牲になる苛烈な歴史を持つ島である。戦後、多くが軍用地にされたが、住民は生きるために荒れた自らの土地に入って耕し始めた。
2022年、91歳になった平安山良有さんもその一人だ。

「人の手で、一坪一坪起こして、始めはイモから大豆を作ったり麦を作ったりして、自給自足というんですかね、ようやくやっているときに」
戦後10年、アメリカ軍は、銃剣とブルドーザーで否応なしに家を破壊し土地を奪った。
平安山さん
「抵抗もできないし、向こうのやりたい放題だよ」
アメリカ側は「丁寧に壊した」と言ったという。
土地接収に対し、非暴力で抵抗した住民運動のリーダー・阿波根昌鴻の声が残っている。

「完全武装兵が着剣して上がりました。300名あまりが。土地をとられると食べ物がなくなって死んでしまうと、取ってくれるなとお願いしましたら、殴る、蹴る、半殺しにされて、縄でくくって、ぶちこまれた」
それでも農作業を続ける住民にとどめを刺すように、広大な農地を焼き払ったのだ。